第17話 別の色の回想

 帰り道。サヤカは、出会いを思い出していた。

 あのときと変わらない並木道なみきみちを前にして。


「髪飾り、じゃない。宝石ほうせき?」

 木の根元で、水色みずいろ宝石ほうせきが1回光った。

 割れてふたつに分かれているにもかかわらず、左右対称さゆうたいしょうつばさのごとく鎮座ちんざしている。何かの力が働かないとありえない。

 それを、ほかの誰も気にしていない。周りを見回しているのは一人だけ。

「誰かいるの?」

 水色みずいろ宝石ほうせきは、2回光った。

 手をのばさない少女にごうを煮やしたように、宙へと浮かぶ宝石ほうせき。サヤカがたずねる。

「あなたは、そこにいるの?」

 水色みずいろ宝石ほうせきが1回光った。


 サヤカは、自分の部屋で着替え始めた。

 灰色に囲まれた紺色こんいろ。ここで起きたことの回想かいそうが、なが追憶ついおくとなる。


「勉強は自分でしたほうがいいと思うけど」

 つづきを言う前に通話が終わった。

 思い切りむねってびをする。青緑の天井てんじょうが目に入る。藍色あいいろしろ模様もようの入った服の次に、机の上を見た。

「行かなくていいかな」

 サヤカのつぶやきに、水色みずいろ宝石ほうせきが2回光る。

「何かが、ある?」

 水色みずいろ宝石ほうせきは、1回光った。


 あの日。

 道で、黒ずくめの男がカナエの前に立っていた。

やみよりいでよ、セーマ!」

 桃色の光がカナエに近づく。黒く染まった。

 かげのようなものが広がり、巨大な怪物かいぶつあらわれた。全長は約5メートル。

 なにかを求めて歩き出したように思える。


 うすいまくにはれられない。するりと通り抜けるだけ。

 手の届かない別の世界の出来事できごとが、目の前に広がっていた。

 サヤカは何もできなかった。ただ、遠くでマユが変身解除へんしんかいじょするところを見ていた。


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