第14話 本音と建前

 現実げんじつ景色けしきがそこにある。

 ガイロンの手の者はどこにも見当たらない。まわりは、芝生の多い公園。

 まばらに見える人々は、誰も二人の少女を見ていない。

 桃色の少女が歩みを進める。水色の少女へと、穏やかな顔で近づいていった。

「こんにちは!」

「え。こんにちは」

「わたしは、ピュア」

 かけらを手に持つ少女は、表情をあまり変えない。落ち着いた雰囲気ふんいきただよわせている。

「ラディラブ・アレンジ」

 ピュアが屈託くったくのない笑顔を浮かべる。

「よかった。ほかにもたたかひとがいて。一人はちょっと不安だったの」

たたかうのは私一人わたしひとりでいい」

 アレンジが、言葉にかぶせ気味で断言した。

「ひとり? あれ? そういえば、ラディラブって――」

「聞こえたなら、宝石ほうせきを渡して」

 ようやく意味が理解できたようで、ピュアの顔つきが変わった。

変身へんしんできなくなると、困る!」


 木々の中で倒れていた中年の男が、目を開けた。

「いかんぞ。これは」

 はっきりと見えないし聞こえない。それでも、男は確信していた。少女たちが言い争っていると。急いで近寄る。

「ケンカはよくないぞ」

「違います! え? 見えてる?」

「おじさんは黙っていてください」

『すこしはちからがあるみたいだね。完全には見えてないよ』

 おとなしくしたがうおじさん。しゃべ宝石ほうせきの言葉には反応しなかった。肩を落として去っていく。

「シューは渡さないから!」

 おたがいに意見を変えず、二人が背を向けた。


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