第12話 奮闘する誰か

『セーマだ。近いよ』

「ごめん。用事ようじができたから、またね」

 シューへの返事はない。マユは、間髪入かんぱついれずミツキにあやまった。

 開かれるドア。赤村あかむらと書かれた表札ひょうさつれない。急いで出ていくマユを、すこしだけ背の低い少女が見送る。

「電話かなぁ?」


 走っていたマユが歩き出す。現場げんばが近い。

 巨大な黒い怪物かいぶつの姿はなかった。

 その代わり、さらに大きな透明とうめいに近いドームがある。校庭よりも4倍は広い公園を、うっすらとつつまく

『外からみた幻の世界だよ』

「ノーシス?」

『そう。覚えたかな』

「そうじゃなくて。よく分からないけど、お願い。シュー!」

 マユがまるいケースをかざした。なかには宝石ほうせきがはめ込まれている。十字の上部分が長いピンク色が、かがやきをす。

『エックスカラット』

 言葉のあとで、やさしくピアノ中心の音楽が鳴った。

 まぶしい光に包まれる少女。

 きらめく笑顔。服が変化した。桃色を基調きちょうとし、ひらひらしたかわいらしい服装へと。

 腰の左へ、移動ポケットの飾り代わりにシューがおさまった。

 ボブカットの右前に、剣のような形の髪飾りがつく。うしろ髪はそのままで、後頭部だけ小さくひとつに束ねてある。

 桃の花と桜の花、さらに白い花を合わせたような色合いになって、変身へんしん完了かんりょうした。

「ラディラブ・ピュア!」


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