第三節 異なる色 アレンジされた光

第11話 セーマと戦う少女

 川沿いにならぶ葉桜はざくらの緑が、いつもと違う。

 ラディラブ・ピュアの放つ光の中で、セーマと呼ばれた怪物かいぶつは消えた。


 普段どおりの色。ノーシスが消え、元の世界に戻った。

 桜の花のようにかがやく少女のほかには、セーマが消えて喜ぶ人はいない。

 川からはなれた壁を背に、髪をみだした男が息をはく。

「わざわざ手の内を教えさせて、えらそうに。自分でやれよ、マジで」

 リョウは眉間みけんにシワを寄せ、苛立いらだちをかくさない。メガネの位置を直した。黒が目立つ服を重そうに動かして、ゆっくりと歩いていった。

 川沿いの道。宝石ほうせきのかけらが少女のもとへ飛んできた。笑顔で回収かいしゅうする。

 倒れていた八百屋やおやが目を覚ました。

「なにやってんだ。寝てる場合じゃねぇ」

 あわてて店へと帰っていく姿を見届けて、ピュアがそそくさと移動する。公園の茂みで変身へんしん解除かいじょして、マユが出てきた。

 すこしほおを赤らめながら、すました顔でベンチに座る少女。

「何か思いだした?」

『水色。……ギア』

 にぎるケースからの声が止まった。桃色ももいろ宝石ほうせきは、静かにたたずんでいる。

「寝ちゃったのかな?」

 シューは、移動ポケットにしまわれた。黄土色おうどいろの服がゆっくり動く。

 周りが誰もマユを気にしていない中、こっそりと見ていたサヤカがかくした。


 落ち着いた赤色の混じる、きれいな部屋へや

 マユは、近所の女の子と遊んでいた。としはひとつしか違わない。小学生のころから仲のいいミツキの目は、かがやいている。

「はぁい」

 ノックに返事がされて、ミツキの母親がお茶の差し入れにやってきた。

「運動なら、外でしたほうがいいんじゃない?」

 いさましいポーズのまま得意気とくいげな顔をつづけるミツキに優しく言って、出ていった。

 ドアが閉まったとたん、赤い服の少女がすごい勢いで隣に座る。

「あたし、知ってるの」

「なに? ナイショの話?」

 ミツキにつられて、マユも小声になって顔を近づける。

変身へんしんして戦う人がいるんだよ。中学生くらいの」

「え! 危険きけん。あぶないから、その女の人を見かけても近付ちかづいちゃダメだよ」

 真っ赤な顔を見て、ミツキが不思議ふしぎそうにうなずいた。


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