第3話 実現される思い

 きりっとした顔で、少女は答えた。

「助けたい」

『マユにはその力がある。思いの実現のため、ボクをショクバイにするんだ』

 眉を下げてよく分からないことを隠していない少女が、表情を変えた。目に力が入る。

「お願い。シュー!」

 ピンクの宝石が輝き、手から離れていく。

 まるいケースが現れた。白っぽくて手のひらサイズ。もともとひとつだったかのように空中でぴったりと合わさり、再び小さな手に戻る。

『エックスカラット』

 ピアノ中心の音楽が鳴った。

 光に包まれるマユ。

 かがやいて、服が変化していく。はずむような高い音とともに。

 桜の花よりも濃い、桃色を基調としたかわいらしい衣装になった。いたるところにフリルがついている。

 ブラウスは肩の部分がふくらんでいて、半袖。

 手首に輪になった布が巻かれる。ソックスとともに、靴も変化。

 短めのスカートをゆらし、移動ポケットの飾りとして、シューがおさまる。

 前髪の右上がなびく。剣のような形の髪飾りがついた。

 うしろ髪はそのままで、後頭部だけ小さくひとつに束ねられた。ちょこんと。

 決めポーズも名乗りもない。可憐な少女が驚いて、変身が完了した。


『あの黒いのに、思いをぶつけるんだ』

「思い? ひどいことしないで」

 桃色の少女と黒い怪物から泡のようなものが広がって、周りの人たちが消えた。


「ちょっ。ちょっと、どうしよう」

『ふたつの念動ねんどうがぶつかって、幻の世界をうみだしただけだよ』

 複雑な表情で移動ポケットを見る少女に、返される言葉は説明だけ。ただし、現実とすこし色が違うことへの説明はない。

『思いを力にかえるモノを、念導師とよぶ』

「ねんどうし? 牛じゃないよ、わたし」

『牛じゃないよ。気に入らないなら、すきに決めて』

 すこし離れた場所にいる黒い怪物は、ゆっくりと近付きつつあった。

「じゃあ、放射するラディエイトと、愛のラブを組み合わせる」

『長くない?』

「略してラディラブ」

『言いにくくない?』

「ラディラブ・ピュア!」

 可憐な少女が、叫びながら構えを披露した。見ている人は誰もいない。

『うん。シキベツできれば、なんでもいいよ』

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