お題【祈る】彼女の願う夢
「夢が叶いますように!」
星に祈る唯花に、お気楽ねぇ、と声をかけた。唯花はへへへ、と笑った。唯花は何にでも祈る。夕日に、虹に。叶えてくれそうであれば何にでも。
私はスマホで時間を確認した。塾までギリだ。うちは親が厳しい。いい学校、いい大学、いい就職先。小学校のころから分刻みのスケジュールを強いられてきた。ため息。悩みが尽きない私に比べて、こののほほんとした唯花に何の悩みがあるんだろうか。
「そう言えば……唯花の夢って何?」
どうせお気楽な願い事なんでしょ。
「ママと笑って話がしたいんだよね。うちのママ、お兄ちゃんとしか話さないから」
そう言うと屈託なく唯花は笑う。私は寒空の下、思わず唯花の手を握った。
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