お題【お盆】 初盆
久しぶりの実家。最初こそ落ち着かなかったが、すぐに慣れ親しんだ感覚を思い出した。電気仕掛けの雪洞が静かに回る。仏間に落ちる花の影、磨かれた縁側。歩くたびうるさかった廊下も、今は押し黙っている。
「久しぶりだな、涼」
項垂れて座る涼に声をかける。涼ははっと顔を上げた。目を見開く。
「酷いじゃないか。親戚の葬式くらい、呼んでくれてもいいだろう。初盆なのか。大おじか?」
そりゃあ確かに俺は、金の無心ばかりのろくでなしの兄貴だが。俺はそうつぶやくと、線香に手を伸ばした。
「言えるわけ無いだろう。兄貴。だって、あんたの葬式だったんだから」
「――そうか、すまな」
はた、と灰が落ちた。あとは日暮が鳴くのみだった。
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