お題【音】花火大会の夜に。
「そこまで言うなら調べよう」
と亜美は言った。
音は全ての方向に同じ速度で伝わる、と説明したら、そんなはずはないと亜美が言い出したのだ。
「うちは花火会場の『裏側』だから、音は『表側』より遅く聞こえる」
もちろん花火に表も裏もないはず。なら検証しよう、ということになった。逆方向で同じ距離の場所に立ち、通話をしながら、花火の音が同時に聞こえるか確かめるのだ。
花火大会の夜。
俺と亜美は通話状態にしたまま花火を待った。大輪の花が空に咲く。さて音は。もちろん同時に聞こえるはず。それみろ、と亜美のことを笑う準備はできている。俺はスマホに集中した。俺の耳に飛び込んできたのは。
「好き」
花火の音などもう聞こえなかった。
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