お題【答える】君は本当のことを答えない。
「ガジガジ君アイスってさ、髪の毛一本多い絵のが当たりなんだって」
そう言って翔はかりかりと頬を掻いた。私はガジガジ君のアイスをかじりながら答える。翔の嘘は癖があって、すぐにわかる。
「嘘でしょ。聞いたことないし」
「本当だよ。4組のえーっと、伊藤が言ってた」
そして翔はまた、頬を掻いた。
「嘘ばっか。4組に伊藤なんて子いないよ」
ばれたか、と言って翔もアイスにかぶりついた。夏の防波堤は日をよけるところがない。
「あんた、なんでそんなくだらないウソつくわけ? あ、私にかまって欲しいのか。あんた、私が好きなんでしょ」
「ばーか、そんなことねーよ」
そして翔は、またかりかりと頬を掻いた。私たちは黙って、アイスを食べた。
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