お題【服】セーラー服の時間

 ミツキはセーラー服のスカーフをつまんだ。

 脱ぎ着するときには化粧がつきそうになるし、冬は寒い。あんまり中にも着られないし。不便な服。でもこの服の中には、未来がつまっているんだ、とふいミツキは思った。――未来。

「もう、いいんじゃないの?」

 幼なじみであり、恋人のユウが言う。

「ナツキはもういないんだよ。その分を…ミツキが引き受けなくてもいいんだ」

 ナツキが着れなかった分まで、着ようと思ったのだ。ナツキの時間を生きようと。

「ミツキの時間が…なくなっちゃうじゃない」

 詰まっていたはずの未来は、もうここにはいない。

「ナツキは…別の時間を生きなくちゃいけないんだよ」

 ミツキは、そっと自分ののどぼとけに触れた。

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