お題【雨】雨景色

 私は顔をあげた。

 雨が降ってきたようだ。

 すっぽりと家を覆うような厚い雨音。

 網戸を抜けてくる風は湿度を増して、独特の匂いが鼻をつく。昼の陽で焼けたアスファルトに、水が落ちる匂い。


 私はスマートスピーカに命じて、小さく流していたクラシックを止める。雨音をBGMに、読書というのも悪くない。床に寝転んで本をめくっていた。

 ふと雨の強さを確かめようと這ってベランダに近づいたとき、おかしなことに気づいた。網戸の向こうからする雨音に「隔たり」があるのだ。

 誰か、──?

 全身が硬直し、皮膚が粟立つ。が、すぐ「にゃあ」と鳴き声がした。

「なんだ、猫か」

 私はひとりごちると、再び点字の世界に没頭していった。

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