お題【橋】ブランコの公園

 幼い頃、橋向こうにある象のブランコの公園を、とても遠い場所だと感じていた。県境に住んでいたので、橋の向こうは隣の県だったからだ。親に連れられた僕は、塗装の剥げた象のブランコに夢中になった。

 大学生になった時、初めて恋人ができた。隣の県に住んでいた彼女は、幼い頃の思い出の公園に僕を連れて行ってくれた。僕とよく似た思い出を持つ彼女を好ましく思った。

「バクのブランコの公園なの」

 彼女は塗装の剥げたブランコを示した。

「えっ? これバクなの? 象じゃなくて?」

 僕は日曜には娘を連れて公園へ行く。言葉を話せるようになった娘は本当に可愛い盛りだ。

 ブランコを指差し、言う。

「ばくのぶやんこ」

 僕はまだ少し、納得がいかない。

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