「使わない鍵を枕の下に入れると、願いが叶うんだよ」

　友達が言っていた。使わない鍵か。

　古い自転車の鍵、取り壊してしまった祖母の家の鍵、なくしてしまった日記帳の鍵。

　それから――もう二度と会うことのない恋人の部屋の鍵。私は引き出しを開けると、和也の部屋の合鍵を取り出した。

　もう一度会いたい。

　そう願い、鍵を枕の下に入れた。

　深夜、異常な胸の痛みで目を覚ました。家族を呼ぶ。家族は私の様子を見て、慌てて救急車を呼んだ。

　薄れゆく意識の中、枕の下にある鍵が転げ落ちるのが見えた。そうか、鍵は人に会うために扉を開くのだ。それが例え、黄泉の扉であったとしても。

　鍵の向こうに、いるはずのない彼の姿が見えた。

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