お題【演じる】 君は台本《ほん》の中

「良いね」

「ありがとうございます!」

 高校演劇、部内オーディション。顧問の賞賛に礼をする。高校演劇で名を売り、大学で芝居を学ぶ。俳優一家に生まれた僕が目指すルートだ。

「つまんないですよ」

 女生徒が言った。鳴り物入りで芸術コースに転校してきた、今回の演出担当だ。

「君は君という人生を…用意された台本ほんの中を生きているだけのよう」

 僕は首をかしげた。それの何がいけない?

 僕達は誰かが書いた物語の人物にすぎないかもしれない。

 そうではないと言い切れるか?

 今だって僕の物語を読んでいる人がいるかもしれないだろ。

 それに、その人すら誰かの作った物語を生きているだけかもしれないじゃないか。





── 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る