最終話 じゃじゃ馬王妃!

 クラウ・ソラスが破邪の光を放つのが、犬山にも確認できた。

 アンも、光となって消えていく。


 あとは、銅像が残っているのみ。



 



 さっきまでの暗雲が、ウソのように晴れ渡っていた。


 通行人たちも、先ほどの騒動など忘れて、普段通り過ごしている。



「今のは?」


 失神していたカップルが目を覚ます。




「夢ですよ、ただの夢」



 本当は、アン・ド・ブルターニュが降臨して世界を救ったと伝えたかった。


 しかし、いくら犬山が騒いでも、きっと誰も信じない。


 これでいいのだ。


「そっかー夢かー」

「なんかリアルな夢だったような」


 カップルたちも、おぼろげながら何かを覚えているようだ。


「やだなー。私の話に退屈して、二人とも寝ていたじゃないですかー」

 蒸し返すこともせず、犬山はとぼけた。


「またのお越しをお待ちしております」


「バッキャロー! もう来るかっての!」


 そう言いつつも、カップルたちは満足げに去って行く。


「あーあ。またお客さん逃しちゃった。でも、次は大丈夫ですよね」


 犬山は、アンの銅像に会釈をする。



 銅像の口角が、わずかに上がった気がした。


「さて! お仕事、お仕……ごっ!」

 犬山は、目の前にいたガイドとぶつかる。

 ダイレクトに、相手の豊満なバストへと顔をダイブさせてしまう。


「ご、ごめんなさい」

 慌ててガイドから離れ、犬山は頭を下げる。


「いいのよ。気をつけてね」

 日の光で女性の顔は見えなかったが、口元は微笑んでいるように見えた。



 去り際、ガイドの女性が何かを落とす。



「これは!」



 その特徴的なブローチを、犬山は見たことがあった。



 ガイドを追って、犬山は走る。


 だが、女性はフッと消えたように、どこにもいない。



「まさか、ね」

 犬山は、ブローチを握りしめた。


 終わり

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じゃじゃ馬王妃! ~フランス王妃アン・ド・ブルターニュが、悪徳貴族と魔族共を裁《シバ》く!~ 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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