さらばアン!?

「イコ、これを!」

 アンに呼ばれ、イコは振り返る。


 狙いを定めて、アンはイコに剣を投げ渡した。


 跳躍したイコは、剣を受け取り、一度鞘に収める。


「今よ、みんな。成敗ピュニール!」

「承知!」


 着地した瞬間、イコはレミ教授の首を居合いで切り裂く。

 カウンターすら許さない、必殺の一撃。


 レオが発砲した。リザが弾丸に風の魔法を纏わせる。


「ぬううう、バロール教団バンザイ!」

 威力と精度を上がった弾丸により、教授は頭を砕かれた。


 ジャネットとメルツィが、残った教授の胴体を粉砕する。


「あとは、あなただけよ!」

 アンが、メリュジーヌに剣の切っ先を向けた。


「これで勝ったつもりか、ブルターニュ!」

 メリュジーヌは、勝ち誇ったように笑う。


「バロールの力は、もう効果が切れるわ!」

「ああそうだ。もはや父バロールに、復活の力はない! だが、力はまだ生きている!」


 小さくはなっているが、まだバロールの瞳は輝きを失っていなかった。


「残った力でフランスの歴史を変えてやる! 貴様らの影響力が及ばない時代へ飛んで!」


「なんですって?」


 レオが、アンの真下に。

「アン殿、この瞳には、違う歴史へ飛ぶ力があるようですぞ!」

 信じがたい能力を、レオが分析した。


 確かに、見たことのない世界が、バロールの瞳から映し出されていた。


 いたって平和そうな世界だが、鉄の建物ばかりで窮屈そうにも見える。


「フランスが死ねば、我は本懐を遂げられる!」

 メリュジーヌが、バロールの瞳の奥へと飛び込んだ。


「そうはさせないわ!」

 すかさず、アンも後を追おう。


「待ちなよアン!」

 リザに呼び止められた。


「今度こそダメみたい! リザ、後はお願いね」

 リザに微笑みかけ、アンはバロールの瞳の中へ。



 

 歴史の流れに翻弄されながら、アンはフランスが迎える歴史を高速で眺めている。


 あと一〇年も経てば、妹イザボーは死んでしまう。

 その年が、アン・ド・ブルターニュの死んだ年月として記録される。


 結局、アンはこの時代に戻ってこられないようだ。


 身内の死に際で、側にいてやれないなんて。



 クロードは、微妙な男を掴まされるらしい。

 ルネも、夫に投獄されるのだとか。

 自分は、母親らしいことをしてやれずに死ぬのか。



 レオはジャネットと子をなす。

 その子孫は、伝史聖獣リルを観賞用として展示していた。


 ジャネットのきょうだいたちは立派に成長し、子孫をもうける。

 七割は、画家やファッションデザイナーとなり、世界を変えた。

 だが、残り三割は、犯罪者になってしまう。


 メルツィはローザと結ばれ、子孫はヒラサワと名乗るニホン人と結婚するらしい。


 唯一、リザの未来だけが見えない。見たくても、モヤが掛かっている。だが、今生の別れになったとも思えなかった。


 自分はこれから、どうなるのだろう?


 とにかく、メリュジーヌを追わねば!

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