教授の弱点は?

「足下を見るッス!」


 レミ教授の足下に、泡が立っていた。イコたちが斬り捨てたモンスターの死骸だ。

 泡は、教授の下へ這いずり寄った。

 教授の身体にまとわりつく。


「ふんっ、素晴らしい。これぞバロールの加護!」

 教授は羽根を千切っては周辺の魔物に投げつける。


 羽根の刺さった魔物が泡と化した。

 

 魔物だった泡が、またしても教授の身体に取り付く。



「どうやら、魔物を取り込んで、生体鎧に変換しているようですな!」

 レオの分析により、攻撃法が分かってくる。


「どうすんだよ。いくら殺しても殺しきれない」


「ここはアン殿の聖剣頼みにするしか」


 しかし、アンに負担を掛けるわけにはいかない。


「弱点を探すッス」

 突破口を開いたのは、ジャネットだった。


「どういうことだい?」

「やたらめったら強いヤツってのは、大抵弱点があるもんッス。ドロテがそうだったッスから」


 そこを突けば、アンの力がなくても勝てるに違いない、と。


「なるほど。理にかなっておりますぞ!」

 レオも、同意見のようだ。


「アタイらでスキを作るので、お二人には分析を任せるッス」


「頼んだよ!」


 イコとジャネット、メルツィが教授と肉薄する。


 教授はイコの剣を見切り、ジャネットの奇襲をねじ伏せ、メルツィの腕力も退けた。


「強い」

 肩を押さえながら、メルツィがヒザを折る。


「以前と強さが段違いでござる!」

「さすがオリジナルってところッスかね」

 イコとジャネットも、肩で息をしていた。


「あんなヤツに、弱点なんてあるのかよ!」

 三人を回復させながら、リザは悪態をつく。


「ありましょうぞ。ただ、見えづらいのでしょうぞ」

 ジリジリと、教授がリザたちへにじり寄る。


「何か悪巧みをしているようじゃが、ワシの研究に不備はない!」


「その傲慢さが弱点と言われたことはございませんかな?」


 傲慢なレミ教授の発言を、レオが鼻で笑う。


「なんと!? 人の分際でバロールの使徒を愚弄するか!」


 激高した教授が、翼を羽ばたかせた。


 翼が起こした衝撃波で、リザたちは吹き飛ぶ。


「バロール。そうか!」


 リザはすぐに体勢を整え、上空を見上げた。


 空には、バロールの瞳が赤々と輝いている。

 あの瞳から、モンスターが湧き出していた。

 どこから現れているのかと思ったが。


「イコ、剣を貸しとくれ! あの目を潰す!」

 リザが、イコに手を伸ばした。


 イコは、剣を鞘に収める。


「取り返せないかも知れない。だとしたらすまない」


「いいえ。霊剣は、必ず戻ってきましょうぞ!」



 何のためらいもなく、イコはリザに剣を託した。




 鞘から剣を抜き、リザは風の魔法を唱える。

 リザの竜巻なら、あの瞳に届く。


「いけええ!」

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