仲間たち

 同じように戦っていたリザとレオコンビの手が止まる。

「見事な。実に美しい剣術ですぞ」


「これがケルトの本気かい?」

 違う。

 アンは、力をセーブして魔物を斬っている。

 モンスターが弱いせいで、数は減らせていた。


 雑魚モンスターを屠る程度のパワーなら、発動させても問題はないようだ。

 メリュジーヌとの戦闘に向けて、極力温存しておきたい。


「敵も、大して強くないね!」

「けれど、数が多すぎるわ!」


 問題は魔物の多さである。

 あまりにも大量すぎた。

 三人だけで押さえ込める物量ではない。


 三人は、中央に押さえ込まれた。


 ここまで来て、全滅は避けたい。


 クラウ・ソラスを全力で解放すれば、切り抜けられる。


 しかし、それだとメリュジーヌと戦えない。

 ここまで見越して、魔物を集めていたか。


「メリュジーヌごと巻き込めれば」


 アンが、クラウ・ソラスを握り直した瞬間、唐突に道が開けた。


 あっという間に、モンスターの数が半分近く消滅する。



「イコ!」



 愛洲移香斎が持つ霊剣が、うなり声を上げていた。

 一刀のもとに、モンスターの命を刈り取る。


 イコがモンスターを屠る様は、魔物たちが自分から刀に突っ込んでいるようにも見えた。


「誰にも告げずに出て行ったのよ。それがなぜ?」


「霊剣村正が騒いだのでござる。何か良からぬコトが起きていると」


 村正が、魔物を撫でる。

 それだけで、モンスターはスパスパと両断された。




「ジャネット、あなたまで!」




 イコの隣では、ジャネットがクナイを振り回し、蹴りで魔物の頭を砕く。


「オルガ姐さんから、食ったんだから目一杯仕事してこいって言われたッス」

 大型モンスターの首へ、ジャネットは飛び乗った。

 肩車状に足をからめて、相手の首をねじり折る。


 リザとレオに襲いかかったモンスターが、三節棍によって撃退された。


「ボクは殿下の部下ですから。パリは、国王とギルドに任せました!」

 メルツィが、三節棍を振り回し、モンスターをなぎ払う。


 ジャネットが、イコが、メルツィが、魔物たちの討伐を担当する。


「ええい、計画がことごとく! こうなれば!」

 業を煮やしたらしきメリュジーヌが、再度魔物に号令をかけた。


 ただでさえ薄暗かった空が、墨を塗ったかのように黒く染まる。


 月明かりのように、赤い一つ目がアンたちを見下ろす。


「真の力を見せよ! レミ教授!」


 メリュジーヌが、意味深な指示を出す。


 白いカラスの怪人が、戦場に舞い降りる。


「ザコは任せたぞ。さて、貴様の相手は我だ。ブルターニュ!」

 憎しみのこもった眼差しを、メリュジーヌがアンに向けた。

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