宴の終わりに

「クロード、みんなと仲良く遊んでいるのね」

「はい。お母さま」


 クロードの周りにいるのは、なんとローザをいじめて、クロードに痛い目に遭わされた子たちだった。

 今ではすっかり、仲良く遊んでいる。


「ポン」

 ルネも、彼女たちから護身術を教わり、楽しそうだ。


「お友達ができるって、こういうものなのですね。お母さま」

「そうよ。大事になさい」

「はい!」


 続いて、アンはオルガと酒を酌み交わす。


「ほらぁ! あなたも飲んで飲んで!」

 空いたグラスに、アンはシードルをなみなみと注ぐ。


「殿下、飲み過ぎですわ」

「いいのいいの。王様のいぬ間に命の洗濯ってね!」

「で、ですわね!」


 今日は友人同士に戻り、二人でグラスを傾けた。


「カーッ! もう一杯!」

 日頃のストレスがたまっているのか、オルガが愚痴をこぼし始める。


 困り顔で、アンはオルガの話に付き合う。


「それでですね、クロード様もルネ様も、ぜんっぜん言うことを聞かなくてですねえ、ちょっと聞いてます?」

 酒が回りすぎたオルガは、とうとう船のマストに向かってしゃべり出した。



 そのスキにアンは、リザとレオのテーブルに。


「どうしたの二人とも。お酒が進んでないじゃない!」

 千鳥足のアンは、リザに酒を勧める。リザだってイケる口だ。


 だが、リザは杯を受け取ろうとしない。



「アン、何かあったね?」



 さすが古い付き合いだ。二人はアンの心中を察したらしい。


「モンサンミシェルに行くわ。メリュジーヌと決着を付けるために」

 正直に話す。


「ほうほう。それで今生の別れを楽しい席に、ね」

 察しのいいレオが、アンの心中を言い当てた。


「まあね。でも、今夜は愉快なお酒よ。今日は盛り上がりましょうよ」


「だね。クヨクヨしたって仕方ない。パーッとやるか」

 場の雰囲気をぶち壊すのは気が引けたのか、リザはシードルを豪快に煽った。


「よろしいですな! 進化論でも説きましょうぞ!」

「それはいい」

 レオが調子に乗りだしたのを、リザが止める。


「リザ、話があるの」

 パーティから抜け出して、アンはリザと二人きりになった。


 事情を説明して、リザにも協力を要請する。


「それ、本当かい?」

「本当よ。それで、もしものことがあったら」

 アンに何かあれば、後のことを任せたいと告げた。


「アタシでいいんだね?」

「あなただけにしか、頼めないの」


 あと、最終決戦にはついてくるなと。


 国王の戦力のおかげで、フランスが襲われることはないだろう。

 だからといって、リザたちを危険な目に遭わせたくなかった。


「今さら水くさいよ、アン」

「それでも、ケジメを付けたいのよ。ヤツらの狙いはおそらく私一人。私だけで戦うのが道理よ」

「分かったよ。後のことは任せな」


 楽しい夜は、あっという間に過ぎていった。

 



 後は、明日の決戦に備えるだけ。

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