レミ教授、成敗する《ピュニール》!

「クラウ・ソラス!」

 アンは、銀の剣で教授を打ち落とそうとした。


 だが、クラス・ソラスは教授に傷を付けられない。

「利かない!?」

 強大な瘴気によって、ケルトの力が弾き飛ばされてしまったのだ。


 アンの腕に、カラスの爪が食い込む。


「殿下!」


 駆け寄ろうとする仲間を、アンは手を上げて制止した。


 着地した教授が、追撃してくる。


「おのれ、これまでか」

 カラスの怪人が、血を吐く。


 結局は、年寄りの冷や水だったらしい。

 バロールの膨大な瘴気は、老人の肉体を蝕むだけ蝕み、打ち止めとなった。


「だが、この機会は逃がさぬ。とどめ!」

 アンの心臓を貫こうと、教授は残った腕を突き出す。


 自らの命を燃やし、アンは再度、クラウ・ソラスに力を注ぎ込む。



「今度こそ安らかに眠りなさい、レミ教授」

 銀の剣が、輝きを増した。





成敗ピュニール!」









 鋭さと切れ味を取り戻したクラウ・ソラスで、アン自らがレミ教授を袈裟斬りに。


 ケルトの魔力を秘めた銀の剣が、レミ教授をその野望ごと断じた。


「はああ、またワシの命が消えていく! 力が、王国がああ!」


 断末魔の叫びを上げて、レミ教授は絶命する。

 最期は、骨だけとなった。


 

 同時に、洞窟内で地震が発生する。


「洞窟が崩れます。急ぎましょう!」


 メルツィの案内で、アンは洞窟を走り抜けた。


 アンが脱出した瞬間、洞窟の入り口が岩に塞がれた。間一髪である。


 ようやく、アンはパリの近くまで戻ってきた。


「やったわ。ついにバロール教団を」


 フランスの敵を、すべて倒したのだ。

 これで安心して、夫を迎えられる。


 だが、メルツィは警戒を解かない。


「殿下、刺客がどこにもいません」


「刺客って?」


 まだ敵がいるのか。


「本当の黒幕がいるのです。女の!」


 その女が、教団のトップに立っているという。


 そういえば、教授を蘇らせた人物がいると、先ほど推理したばかりではないか。 


「アン、大変だ!」


 伝史聖獣に載ったリザが、猛烈な勢いで戻ってきた。

 クロードはいない。


「帰ったんじゃなかったの?」

「引き返してきたんだ!」



 リザによると、子どもたちはレオの屋敷に預けたらしい。全員無事だという。



「それよりヤバいんだ。すぐパリに戻っておくれ!」

「何を焦っているの、リザ? なにがあったの?」

「見た方が早い!」


 リザの誘導で、パリまで戻る。




 パリ全土に、火の手が上がっていた。

 至る所で、悲鳴が上がっている。

 煙に混じって、血の臭いまで漂う。



「どういうこと? リザ、何があったの?」


「パリじゅうにモンスター共が現れて、暴れ回ってる!」


「なんですって!?」

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