変化、教授

「ぐぬぬ、次から次へと!」

 ことごとく攻撃を潰され、レミ教授が歯噛みする。


「遅くなったッス!」

 ジャネット・カプロッティが投げつけたのだ。


「いいわ、ジャネット!」

 アンはクナイを、ジャネットの方へと放り投げる。


「ほいさ!」

 駆けつけたジャネットが、クナイを足の指でキャッチした。

 教授の配下を次々と斬り捨てていく。


「ええい、もっと人はおらぬのか!」

 教授が苛立つ。


 だが、レミ教授の背後に、手下は残っていなかった。

 一人残らず、鋭利な刀の元に斬り捨てられている。


 レミ教授の後ろには、赤く染まった刀を持った鬼が一匹だけ。


「娘が世話になったな!」

 イコまで、レミ教授の前に現れた。


「一太刀浴びせれば、アン殿、後はお任せ致す」


「心得ました!」

 アンは一歩引き、戦況を見守ることに。


「こ、こしゃくな!」

 恐れおののく教授が、イコに向けて手をかざす。

 全てを弾き飛ばす雷撃を。



 しかし、吹っ飛んだのはレミ教授の腕だった。



 イコの剣速に、老人がついてこられるはずもなく。

 教授からすれば、イコが単に移動したとしか分かっていまい。

 いつ剣を振ったかなど、目でとらえられなかっただろう。


「ぐおおお!」

 腕を失い、教授が大声でうめく。


「血が流れていないわ!」

「殿下、ヤツは元々死人です。斬り捨てても問題はございません。再び墓へと戻して差し上げましょう!」


「分かったわ」

 アンが、銀の剣からケルトの紋章を剥がし、握り混む。


「我が前に真の姿を示せ、クラウ・ソラス!」

 血で染まった手を、アンはシルバーソードに滑らせた。



 剣が、目映い光を放つ。



成敗ピュニール

 配下に向けて、アンが指示を出す。


 ジャネットが教授のノドを切り裂いた。


 メルツィが、教授の腹を突き刺す。


「ぬお、ぐううう!」

 それでも、レミ教授が息絶える気配はない。


 それでも、レミ教授が息絶える気配はない。


 レミ教授の全身が、カラスの化物に変形する。


 顔までカラスに変化し、鳥の目でアンを睨みつける。


「それが、あなたの本当の姿なのね」

「左様。地獄への道連れにしてさしあげましょうぞ、アン・ド・ブルターニュ殿下ぁ!」


 彼も、自らをバロールの尖兵として、肉体を改造していたらしい。


「なんというおぞましい妖気!」

 イコですら、教授の放つ瘴気に戦慄する。


 完全体ではなく、腕は片方のままだった。


 しかし、これまで戦ってきたどの魔物より、教授の気迫は凄まじい。



 片翼の教授が、空高く跳躍した。

「お覚悟、殿下っ!」

 教授が降下して、足の爪を伸ばす。

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