レミ教授、余の顔を忘れたか!

「リザ、あなたはクロードを連れて、子どもたちをレオの元へ。彼ならきっと子どもたちを治してくれるでしょう」


「アタシに任せてくれ」


「リル、彼女たちを外に運び出して!」


 自らの役割を把握したのだろう。カラクリ仕掛けのゾウは、リザと女生徒たちを載せて去って行く。



「フランスの領土に秘密基地を作るだけでも大罪、あまつさえ、あんな小さな命さえ弄ぶなど、許しはしない! 覚悟せいレミ教授!」


「黙れ女冒険者風情が! 何様のつもりだ!」


 怒鳴り散らすレミ教授に向かって、アンは言い放つ。










「ジャン・ド・サン=レミ教授、余の顔を忘れたか!」







 レミ教授が分かるように、アンは真正面をむいた。


 アンの顔を見た後、レミ教授はたじろぐ。


「おおお、アン・ド・ブルターニュ王妃殿下!」


 洗礼を浴びるかのように、レミ教授やその配下たちが、一斉にひざまずいた。


「よくも、余の娘をたぶらかそうとしたわね!」


「なっ、なんですとぉ!?」


 レミ教授は、ようやく自分が連れ去った娘が何者か、把握したらしい。


 誰を敵に回したのかも。


「ジャン・ド・サン=レミ教授、その方、子どもたちの夢を奪い、フランス転覆の道具に使おうとしたその罪、言語道断である。その場にて首をはねる!」


「おのれ、あと一歩のところを。者共、であえ! アン・ド・ブルターニュなんぞが、この場所に来るはずもなし! 斬り捨てい!」

 レミ教授が、部下に号令を掛ける。




 アンは、銀色の大剣を顔の側まで掲げた。

 大剣を振って、チャキっと音を鳴らす。




 奇声を上げて、一人の兵士がアンに斬りかかる。


 シルバーソードで相手の武器を弾き飛ばし、脳天に一発食らわせた。


 刃を潰された、殺傷力のない剣である。

 それでもアンがひとたび振れば、その威力は鈍器をも上回る。


 頭にアンの剣を打ち込まれ、敵は大の字になって倒れ込む。


 体中を鎧で固めた、重装備の兵隊が向かってきた。

 メルツィより身体の大きい男が、丸太のような棍棒を振り降ろす。


 アンは意に介さない。剣を片手に構え、棍棒をスルリと抜ける。

 カウンターで剣を相手の脇腹に打ち込んだ。鎧越しから敵のアバラを砕く。鎧のスキマからではない。一番硬い部分を叩き潰した。



 棍棒を落とし、兵隊は戦意を喪失する。

 ひしゃげた鎧のように、兵隊の心は折れてしまったらしい。


「くらえ!」

 レミ教授が、手から電撃を放つ。


「おっと!」


 聞き覚えのあるかけ声が聞こえたかと思えば、どこからともなくクナイが飛んできた。


 アンは自分の近くに飛んできたクナイを蹴り飛ばす。


 クナイが避雷針となって、レミ教授の電撃を中和した。

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