アン、娘との再会
「殿下、こちらです!」
メルツィの呼び声を聞き、ゾウの背後から、アンが飛び降りた。クロードを抱いたメルツィに駆け寄る。
「させるか!」
レミ教授が、アンに向かって手をかざした。
黄金色をした雷撃が、アンにまとわりつこうとする。
アンはシルバーソードを顔の前に構えて、電撃を跳ね返す。
「ぬおおお!」
自分の術で反撃を食らい、レミ教授は吹っ飛ぶ。
「娘をありがとう、メルツィ」
アンはメルツィから、クロードを受け取った。
「いえ。自分がしっかりしていれば、こんなことには」
「とんでもないわ。無事に娘を助け出せたんですもの」
メルツィがいたから、クロードを無事に助け出せた。
メルツィを学園に入れなければ、学校内はもっと悲惨な結末を迎えていただろう。
「しっかりしなさい、クロード」
クロードが、目を覚ました。どこにもケガは見当たらない。
間一髪だったようだ。
「先生と、おかあさま?」
「いいえ、違うわ」
実の母なのに、名乗れないのがもどかしい。
しかし自分は、バロールからフランスを守る身である。
もしも家族に正体が知られたら、家族を危険にさらしてしまう。
ましてクロードは優しい子だ。
母が危険に身を投じていると知れば、気が気でないだろう。
そんな思いを、娘にはさせたくなかった。
「でももう大丈夫よ。あなたの母上の元へ。今は眠りなさい。起きたら、母上の膝にいるわ」
「はい」と、クロードはまた眠りに落ちた。まだ、クロードは寝ぼけているらしい。母を確認できないようだ。
後でかけつけたリザに、アンはクロードを託す。
「リザ、お願い」
「任せてよ」
アンはクロードを抱きかかえ、リザに預けた。
「待て貴様!」
レミ教授が、リザに向けて手をかざす。クロードに当たるのも構わず、雷撃を浴びせる気だ。
ひと睨みで、アンはレミ教授を制止させる。
「ぐぬぅ」
アンの気迫に圧倒されてか、レミ教授が後ずさった。
この惨状はなんだ? アンは、倒れている子どもたちを見渡す。
目が開いている。息はあるようだ。が、死んだような目をしている。
「メルツィ、この子たちは?」
「学園の生徒です。洗脳されてしまったようで」
今はレミ教授の術が解け、眠っているだけらしい。
アンの中に、怒りが燃えさかるのが分かった。
こんな小さな子どもたちを、野望のために改造するなんて。
「手伝ってメルツィ」
「承知!」
メルツィに指示を出し、アンは子どもたちをリルに載せた。
最後に、リザがクロードをおぶったまま、ゾウにまたがる。
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