フランスの敵

「抜群に頭が冴えますな、メルツィ先生。教師にしておくのはもったいない」


 貧民街の住人は、強制的に訓練か改造をして戦闘員に。

 

 貴族はムリヤリ脳を改造して教団の傀儡にする。


 何も知らない平民たちは、おそらくバロールのエサだ。


「フランスを知らず知らずのうちに、内部から破壊する。それが我らバロール教団の目的なり」

「そんなこと、フランスが許すとでも?」

「フランスに許しを請うつもりはない! 我が研究の邪魔はさせぬ!」


「この悪魔め!」

 三節紺を手に、メルツィはレミ教授に殴りかかる。


「ふうん!」

 レミ教授が、メルツィに向けて手をかざす。


 教授の手から稲妻が走り、メルツィをとらえた。


 電撃を受けて、メルツィは後ろにあった棚に突き飛ばされる。


「その程度の腕前で、我にかなうとでも?」


 老人と侮っていた。

 彼は、教団のトップなのだ。もっと慎重に動かねば。 


「あなたの狂気に、フランスを巻き込ませない!」

「フランスの心配より、ご自身の心配をなされたらいかがかな?」

「さてはあなた、どの娘さんをさらってしまったが、ご存じないと見える!」


「なにを?」

 再度、レミ教授がメルツィに向けて手をかざす。


 雷撃が再び飛んできた。


 三節痕で防ぐ。だが、勢いが凄まじく、メルツィは棚ごと転倒した。


「教団の傀儡となった貴族の娘に、身分の上下などあるまいて。さて皆のもの、出ておいで」


 物陰から、レミ教授の合図で、少女たちがゾロゾロとメルツィに歩み寄る。


 みんな、目がうつろだ。こめかみの辺りに、手術痕がある。


「あなたは、なんてことを!」


 彼女たちは全員、女子学園の生徒ではないか。

 つい最近まで自分が授業を受け持っていた生徒たちである。


 メルツィは立ち上がろうとしたが、バランスを崩す。電撃のダメージが思っていた以上にひどい。


「この哀れな男を、ベッドに寝かせてしまいなさい」


 幼い子どもたちが、一斉にメルツィの手や足を掴む。

 メルツィの身体を持ち上げ、ロープでベッドにくくりつけようとした。


 生徒を傷つけないように暴れつつ、メルツィは拘束を拒む。


「目を覚ませ、みんな!」

 メルツィが呼びかけても、子どもたちに反応はない。


 その気になれば突き飛ばせる。

 だが、万が一ケガでもさせたら。


「抵抗せんでもよい。お主も立派な兵隊として……なんと!」

 




 地震が起きたかのように、研究所の足下が揺れた。




 そのスキに、ベッドにいるクロードを抱きかかえる。


 洞窟の壁が壊れた。



「うおおおお!」

 レミ教授の配下が数名、ガレキの下敷きになる。



 大型のゾウが、壁を突き破って研究所に乱入した。大きく吠え、周辺を威嚇する。

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