バロール教団の目的

 レミ教授の後を追って、メルツィは地下洞窟に辿り着いた。


 ブローニュの森は、整備作業が中断している。先王が亡くなったからだ。

 レミ教授は、「自分たちが作業を請け負う」などとウソをつき、この土地を手に入れたに違いない。


 傭兵時代に培った追跡能力をナメては困る。

 足跡や匂い、相手の年齢などで、行く先の限界まで把握できるのだ。

 

 ましてやレミ教授は人を担いだ状態である。

 それほど遠くへは行けまい。


 洞窟の入り口左右に見張りが一人ずつ。

 右側には崖がある。険しいが、出っ張りが多い。力がなくても登れそうだ。


 そっと、メルツィは崖をよじ登った。

 足場になりそうな出っ張りまで登って、入り口の右側にいる見張りを押しつぶす。


「くせも……」

 叫びかけたもう一人のノドを、三節痕で砕く。


 重い足を引きずって、メルツィは忍び足で洞窟の中へ。


 洞窟最奥部には、研究所があった。


 ガラス瓶が、棚にズラリと並んでいる。

 中身は、何かの動物の一部などだ。見たことがない生き物の臓器まであった。


 クロードは、手術台に寝かされている。まだ目を覚ましていない。


 手頃な実験体が見つかったせいか、レミ教授は口の笑みを隠そうともしなかった。


「この子を改造すれば、最強の兵士が誕生するだろう。本当は隅々まで解剖してしまいたいがな。このような珍しい力、そうそうお目にかかれない」


 早くクロードを切り刻みたくて、ウズウズしているという様子だ。





「教師が生徒に手を出すとは、見逃せませんな」

 メルツィは、レミ教授の前に立つ。

「そういうのはね、事案と言うのですよ」




 黒ずくめの戦闘員が、襲いかかってきた。

 難なく、メルツィは黒ずくめ三節紺で叩きのめす。


「しぶといですな、メルツィ先生は」


「できれば、カワイイレディを追い続けていたかったのですが」

 不意打ちを警戒しつつ、メルツィは三節紺を構え直す。


「教授、クロードさんを返していただきますよ」

「この素晴らしい素体、おめおめと渡すものか!」


 仮にもフランスの宝を素体呼ばわりとは。

 自分の欲求を満たすことしか考えていない。


「小娘など、貧民街に行けばわんさと産まれる。だが、貴族の娘をさらう機会など、めったにない。擦り切れていない無垢な少女を、生かさず殺さず慎重に切り刻む。悲鳴を上げていた少女が、教団に従順な兵隊となった瞬間は、格別なる快感じゃぞ」


 人知れず組織に従順な戦闘員を作り上げ、さりげなく貴族の家に送り返す。何事もなかったかのように。

 やがて貴族の子は育ち、誰にも知られることなく組織をとりまとめる犬と化す。


 ようやく、全貌が見えてきた。


「それが、あなた方の計画ですね。レミ教授?」

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