地底の子どもを助けるために
「アン、学校側が騒がしいよ」
イヤな予感がして、アンは学校へ向かう。
学園の中へ。
複数の職員が、縄で縛られた賊を役所の役員に突き出している。
役員は、賊を護送用の馬車に載せていく。
「ああ、王妃殿下。どうしてこんな所に?」
職員と役員が、アンにひざまづく。
「作業を続けてちょうだい。それより、何があったの?」
「誘拐未遂です!」
賊たちは、子どもたちを連れ去ろうとしていたらしい。
幸い、子どもたちは職員に連れられて無事に帰ったという。
「おうひでんか!」
職員をかき分けて、ローザがアンの側に寄ってきた。
「ローザ、あなたも連れ去られそうになったのね?」
コクコクと、ローザは首を振る。
「でも、クロード様が」
ローザは、ハンカチをアンに渡す。
確かに、クロードの所有物だ。
名前が刺繍されている。
「クロード様がわたしにくれたのです。でも、わたしは助けることができなくて」
「あなたのせいじゃないわ。悪いのはレミ教授ね?」
アンが聞くとローザは「はい」と返した。
「今、メルツィ先生が後を追っています。でも」
「二人を心配してくれてありがとう。あなたは早くお家に帰りなさい」
職員に子どもたちを送らせる。
だが、賊の逃亡先は、捕まえた悪漢たちから聞き出せない。
「どこへ逃げたか教えないつもり?」
「ハナから知らない! オレたちは、『ガキをさらえ』とあのジジイから指示されただけで。後は自分についてこいとだけしか」
縛り上げられても真相を言わないあたり、本当に知らない様子だ。
学園を出て、リザと今後を話し合う。
クロードの足取りは掴めない上に、メルツィとも連絡が取れない。
王宮に戻るか?
だが、ヘタに兵士を動かして騒ぎが大きくなれば、一般人まで巻き込んでしまう。
そのとき、一匹のゾウが、アンの前に舞い降りた。
「
呼んでもいないのに、リルがアンの前に出現するとは。
このゾウも、国の一大事を察知したのだろう。
よほどの事態なのだ。
ゾウは長い鼻を伸ばし、クロードのハンカチを嗅ぐ。
匂いを確認できたのか、大きく吠えた。
広場までアンを誘導する。
「何をしようというの?」
アンの疑問に答えるかのように、ゾウは虚空を見上げた。
なんと、鼻先が円錐状に変形する。
ゾウは鋭い鼻を地面に突き刺し、草むらを掘り始めた。
土砂をまき散らしながら、ゾウは地下へと歩を進める。
「どうやら、クロードは地下にいるみたいね」
一旦停止して、ゾウはアンの方へシッポをしきりに振った。
「掴めというのね」
ゾウの主張をそう受け止めて、アンはシッポを握る。
再度、地面を掘る作業が再開された。
「感じるわ。あの子の鼓動を!」
アンにも、クロードの気配が確認できる。
ゾウの鼻を使い、地底深く掘り進む。
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