幕間という名の次回予告 その三

「ブワ……キャローッ! なんでモリエールがこの時代にいるんだよ!」

 カップルの男性が、いちゃもんをつけてきた。


 確かに、モリエールは一六二二年生まれだ。

 一五世紀には存在すらしていない。


「モリエールの先祖だよ! 本人なワケないじゃん」

 カップルの女性の方が、犬山の代わりに弁解する。


「それでもモリエールって劇作家だぜ。傭兵組合なんて作るか?」


「お金は余っていたので、ボディーガードくらいはつけていたでしょうね」


 そのついでで、冒険者のあっせんもやっていただろう。


「それにしてもしぶといな、バロール教団って。段々強くなっていっているし」

「おや、気になりますか?」

「バババ、バッキャローッ! 早く終わってほしいなって思ってるんだよ!」


 ならば、次はとっておきの話がいいか。


「まあ、次のお話は黒幕を探す話ですから」

「マッジ?」 


「マジです」

 歴史資料に目を通す。


「アン王妃はついに、的の黒幕を突き止めます。その名は『ジャン・ド・サン=レミ』」


「レミって、あのレミ教授か?」

 珍しく、男の方が食いついた。


「誰? 料理する人?」

「それは別のレミさんですね」

 カップルの女の発言を、犬山は生やさしく訂正する。


「そのレミ教授って、そんなに有名なの? 聞いたことないんだけれど?」


 彼女の質問に、男は首を振った。

「レミ教授がと言うより、ひ孫が超有名人なんだよな」


「その通りです。よくご存じですね?」

 犬山は、男の発言に割り込んで語り始める。


「もしかして、アン王妃の功績語りに、すっかりのめり込んじゃってます?」


「ババババ、バッカ言うなっての! こんなのウィキにだってのってっから!」

 犬山が茶化すと、男は慌てて全否定を始めた。


 だが、興味津々なのは顔に書いてある。


 とはいえ、これ以上指摘したら逃げてしまうだろう。


「おっしゃるとおり、レミ教授自身も高名な医師で占星術師でした。ですが、ひ孫の有名ぶりには霞みますね。レミ教授のひ孫、ミシェル・ド・ノートルダムの悪評に比べれば」


 犬山の解説に、女性が息をのんだ。

「え、悪評って。この人いったい、何した人なの? 今のフランスみたいにデモを起こしたりしたの?」


「預言をしたんだよ。世界一有名な預言を」

 男の方が、もったいぶった表現で告げる。




「一九九九年・七の月! 空から恐怖の大王がーっ!」




「あー、あの人かーっ!」

 男の言葉に、女性の方も理解したようだ。




「そうです。ジャン・ド・サン=レミ教授は、ミシェル・ド・ノートルダム、通称ノストラダムスのひいお祖父さんなのです」

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