アンのサプライズ

 一夜明け、アンはリザたちの屋敷へ。

 ジャネットとフランチェスコ、オルガも連れてきた。


「これは……」


 部屋を開けた瞬間、ジャネットが目を丸くする。


 レオの周りに、複数の子どもたちが。全員、ジャネットのきょうだいたちだ。洗い物をするもの、洗濯をするもの、ベッドメイク担当もいる。


 みんな風呂に入って、衣装もキレイだった。


「どういうことッスか?」

 何事か分からず、ジャネットは今だ困惑しているようだ。


「今後、レオには研究に専念してもらうわ。そのため、冒険者ギルドには籍だけ置くことにしたの。もう冒険者として活動はしてもらわないつもりよ」


 レオのような頭脳派は、表に出ない方がいいのだろう。

 今回の件で、アンは身に染みた。


「それと、ウチらのきょうだいと、なんの関係が?」

「みんなには、レオの身の回りのお世話をしてもらうのよ」


 ジャネットのきょうだいは、ダ・ヴィンチとリザが面倒を見る。食事と寝床を用意した。


 ダ・ヴィンチは読み書くを教える。


 子どもたちはレオたちから、生きる術や稼ぐ手段を学ぶ。

 こどもたちは必ず働いてレオに代金を返済すること。

 職に就くまでに、何年かかってもいいから。

 これが、交換条件である。


 子どもたちは勤勉だ。いずれはフランスを代表する仕事を獲得するだろう。


「これで安心して、吾輩は参謀役を務められますぞ」

 

 リザの身分を隠すカモフラージュになる。レオが家にいると言うことは、リザも家にいるのだと錯覚する。


「レオが自分で動かなくてよくなったけど、調査はどうするのさ? 不便になるんじゃ」


 リザの質問に、オルガが代わりに答える。


「ご心配なさらず、リザ嬢。この二人が、レオの護衛を兼ねて調査を引き継ぎます」


 二人の前に、アンは自身お抱えの近衛兵を立たせた。


「フランチェスコです」

「ジャネットっす」


 二人は装備を隠して、普段着姿である。


「この二人は、自由に街じゅうを行き来できるわ」


「ありがとうッス。子どもたちに寝床だけでなく、ご飯まで。代金は当分の間、アタイの給料からさっ引いてください」

 ジャネットが頭を下げる。


「いいのよ。あなたには大事な役割があるから」


 そう、今回はそのために、彼女を呼んだのだから。



「でも、アタイは貧民街出身ッス。平民の人たちから情報を聞き出せるかどうか」


 ジャネットの懸念を聞いて、アンもうなずく。


「そこで、提案なんだけど」

 アンはジャネットに向き直った。





 

「ジャネット。あなたには、ダ・ヴィンチ夫人になっていただきます」




 

「へあ?」

 妙な声を、ジャネットが上げる。

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