アンの怒り

 猛スピードで向かった先に、標的がいた。チンピラ風の男が、子どもたちを縄で縛り、引きずっている。



「お前たち、よくも……!」



 アンの中に、怒りがわき上がってきた。


 子どもに乱暴をする人間は、許さない。



「んだぁ? ガキ共の知り合いか?」

 アンたちに気づいたチンピラが、不潔な笑みを浮かべた。



 子どもたちが怯えている。こんなヤツのせいで。



「フランチェ、あなたは子どもたちを!」


「お任せあれ!」


 剣を抜き、フランチェと散り散りに作戦を決行する。


 バロール教団の一味だろう。が、ドロテとかいう女はいない。 

 だが、手練れが数人いる。

 アンの敵ではないが、人質がいてはうかつに動けない。


 人質の安全を気にしつつ、敵を一人ずつ排除する。


「てめえら、動くと……ギャ!」


 人質を縛っていた男に、電撃魔法が振ってきた。感電した男が、鎖から手を放す。

 そのスキに、フランチェがチンピラを殴り飛ばし、子どもたちを解放する。



 もう手加減しない。怒りにまかせ、アンは剣を振るう。


 銀のロングソードで敵の武器を破壊し、殴りつける。


 気後れした様子だった手練れたちも、アンを危険だと認識したようだ。剣を構え直し、間合いを取る。


「遅いわ」

 アンは銀の剣を振るった。

 相手の腕を、持っている武器ごとへし折る。


 圧倒された様子の手練れに、アンは渾身の蹴りを打ち込んだ。


 フランチェが、異形を見るような目でアンを見ていた。


「子どもの命を脅かす悪党共、観念なさい!」


 相手が大けがをしても意に介さない。力のままにたたき伏せる。


 戦闘と言うより、破壊に近い。

 悪党を相手に、これまでこんなにも怒りを露わにしたことはなかった。


 だが、子どもをもの同然に扱うような輩は、我慢ならない。


 命は命だ。命に貧しさも豊かさも関係ない。


 生まれたくても、生まれてこられなかった命だってある。

 病弱で死んでいった、アンの子らのように。


 命を弄ぶゲスは、見逃すわけにはいかなかった。


「いい? よく聞きなさい!」


 アンは悪漢の髪の毛を掴んで、ムリヤリ立たせる。


「命は、あなたたちの、オモチャじゃ、ない! 思い知りなさい!」


 拳を固め、悪漢の頬を力任せに殴る。手首を返し、裏拳で反対の頬を殴った。


 フランチェが残党を排除し、アンが人質を助ける。



「もう大丈夫よ」

 子どもたちを抱きしめ、落ち着かせた。


 フランチェに頼んで、安全な場所へ避難させる。


「助かったわ、リザ!」


「礼なんていいよ」


 チンピラを倒してくれたのは、サイドポニーのエルフ、リザである。


「それよりさ、ヤバいことになっちまった」

 工場入り口へ向かうリザに、アンはついて行く。

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