ジャネット対レオと、デバガメのリザ!

 レオも多少は腕に自信があった。並の冒険者に比べて力も強い。


 それでも、ジャネット相手に押され気味になった。


 ジャネットは、かなりの修羅場をくぐり抜けてきたらしい。


「恨んでも構わないッス! どうせアタイなんて、代わりはいくらでもいるので」

「およしなさい、レディ」

「アタイには敵わないッス。殺しの訓練だってしてきたんス」


 動揺し、レオの力が弱る。


「ほう。その割りには詰めが甘いですな!」


 手四つ状態のまま、レオはジャネットのみぞおちに足の裏を引っかけた。ジャネットを持ち上げ、ひっくり返す。


 ベッドの上で回転し、ジャネットは大の字になった。


 今度は、レオがジャネットをマウント状態にする。


「なんスか、今の技!?」

「これは『巴投げ』と言いましてな。知り合いのニホン人に教わったのですぞ」


「放すッス!」


「吾輩だって百戦錬磨の冒険者。そう簡単に落とせませぬぞー」


 後は、ここに来た理由を問いただすだけ。


「どうしたんだいレオ? 何か騒々しいけど?」

 突然、寝室の扉が開き、リザが顔を覗かせた。部屋の状況を見て、


 自分は、一〇代後半の少女をベッドに押し倒している。


 服が半ばめくれ上がり、ジャネットはほぼ半裸の状態だ。小さな乳房が、シャツの裾から見えかかっている。


 そんな光景を見て、リザに浮かぶイメージは一つだ。


「いや、これは」


「ふふーん。お楽しみの最中だったと」


 遅かった。やはりリザは誤解している。


「違うのですぞ。彼女はむぐう」


 弁解しようとした途端、ジャネットがレオの首に組み付いた。


 痩せた胸に、レオは顔を埋める形になる。


「んー! んっ!」

 言葉を発しようにも、口を胸に塞がれて話せない。


「そういう訳ッス。出て行ってくださると助かるのですが」


 言いながら、ジャネットは銀貨を親指で弾く。「レオに買われたのだ」と、アピールしている。いつの間にレオの財布から抜き取ったのか。いや、私物だろう。


「分かったよ。じゃあレオ、アタシはギルドの酒場で夕飯食べてるから。終わったら知らせてくれな」


 そう言い残し、リザは退出してしまった。


 リザがいなくなった途端、ジャネットが力を抜く。


 足りなくなった酸素を、レオは思い切り吸い込んだ。


「ハアハア、ひどい有様ですな」


 もはや、抵抗する気力すら沸かない。


「死ぬ前に、アタイと楽しむっスか? 抵抗しないんでどうぞッス」


 ジャネットは、先ほどとは打って変わって、レオを優しくゆっくりと抱き寄せてきた。


「とんでもない。どこへでも連れて行きなされ。ご家族のために」


 ジャネットが息をのむ。


 図星だったようだ。高貴な家で働く少女が荒事に首をつっこむ事情など、家族のためくらいである。


 ほとほと、レオは自身の頭脳を呪った。


「何もしないんスか?」


 レオを抱きしめながら、ジャネットは聞いてくる。


「時間が惜しいのでしょう? そんな余裕はないはずです」

 レオは首を振った。


「意気地なしッスね」


 トン、と首筋に衝撃が走る。同時に、レオは昏倒した。

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