助太刀致す!

「商家カゾーラン、その方、私利私欲のために国の流通まで衰退させ、妖術を持って世界を混乱させた罪、許してはおけぬ。天に変わって成敗いたす!」


「おのれ、こうなれば」

 カゾーランは立ち上がり、配下の野盗たちに指示を送る。


「ヤロウ共、この大公さまは偽モンだ。本物がこんな田舎に来るものか!」


 愚かにも、カゾーランたちはアンの抹殺を選択した。


 アンが、剣を顔の横に構える。


 チャキ、と剣が煌めいた。



 銀色の剣が唸りを上げ、野盗をたたきのめす。

 立て続けに三人倒した。


 背後に気配を感じ、背中を剣で守る。

 コマのように回って敵の武器を弾き、剣を叩き込む。


 弓兵が、アンを狙っていた。


「あっちは任せな!」

 弓を構えた野盗に向けて、リザが風の魔法を浴びせる。


 軽く突風攻撃を受けただけで、弓兵は全員バランスを崩して五メートル下に落下した。


「いっちょあがり」

 向こうは大丈夫そうだ。


 アンは野盗を、防波堤にまで追い詰める。


 怒声を浴びせながら盗賊が迫ってきた。


「海ぃ!」


 盗賊を、剣も使わず海へと投げ捨てる。


 側面を狙ってきた野盗は、蹴り飛ばし海へ。後ろから斬りかかった野盗は裏拳で海へと放り込む。


「お前も海ぃ! 全員海ぃ!」


 ポイポイと、アンは野盗たちを、次々と夜の海へと投げ飛ばした。


「こなれば! かかれ、者共ぉ!」

 サソリたちも、数を増やして迫ってきた。やはり妖術師が操っていたらしい。


「いくら王妃が強かろうと、このサソリの群れは防げまい」


 妖術師の挑発に耳など貸さず、アンは防波堤の上でサソリを迎え撃つ。


 剣で足を砕き、動けなくなったところを突き刺す。

「おらああああ!」


 アンはサソリのシッポを掴み、毒針部分を千切った。危ない部分のなくなったシッポを脇で抱えて、ブンブンと振り回す。


 大サソリをスイングし、サソリの集団を吹っ飛ばした。


 だが、野盗の群れは留まるところを知らない。さすが、フランス最大の海賊お言われていただけのことはある。


「まだあんなにもいるのね。リザ!」


 アンの合図で、リザはマチルドとローザの間に立つ。手を胸の前で組み、魔法障壁を張った。


「けど、あたしなしで大丈夫かい、アン?」


 リザは心配するが、アンは平気である。

 野盗の数名が、背後から斬られ、倒れた。


「イコ!」


「助太刀致す!」

 アンを守るように立ち、イコが刀を水平に構える。


 イコとアンの連携で、残っていた野盗も少なくなっていった。


「てめえ、裏切りやがって!」


 往生際が悪い。カゾーランが拳銃を構える。


「もとより協力などしておらぬ!」


 カゾーランの銃弾を、イコの剣戟が弾き飛ばした。


「ぬうお!」

 手を負傷し、カゾーランが拳銃を落とす。



成敗ピュニール!」



 アンが号令を出した。


 リザが妖術師を焼き尽くし、イコがカゾーランを斬る。

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