後始末

「終わったね」


 リザが言うと、アンは振り返って二人にうなずいた。


「全員、おとなしくなさい!」


 数分後、オルガ率いる大部隊が、エチエンヌ伯爵の屋敷に殺到する。先頭を行くオルガが、引き連れている部下にあれこれと指示を出す。


 美術品で埋め尽くされていた庭は、すっかりただの草原と化した。


「報告! 美術品が九割方しか見当たりません!」

 騎士の一人が、オルガの前に。

「なんですって!?」

「屋敷内を探し回りましたが、一部は回収できず」

 オルガが、めまいを起こす。

 

 倒れそうになるオルガを、アンが支えた。


「王妃さま、お手をわずらわせてしまい」

「いいのよ、オルガ。でも、ごめんなさい。私の不手際ね」


「まさか! 偉大なる功績ですわ! これだけの美術品を少人数で守ったのですから!」


 そういわれると、戦った甲斐があったというモノだ。 


「まったく、どこを漁ればこれだけの貴重な品々を盗めるのか、見当も付きません!」


「転売ヤーのなせる技だね」


「あなたはどちら様ですか。どこかで見たことがある気がしますが?」

 いぶかしげな様子で、オルガはリザを見つめる。


「リザ・ジョコンダ。モナ・リザのモデルが彼女よ」


 アンが説明すると、オルガは「まあ」と口をポカンとさせた。

 ダ・ヴィンチもいると説明すると、ヘナヘナと腰を抜かす。


「なんと整ったお顔なの。まるで絵画から飛び出してきたのかと思いましたわ。リザ様」


 見つめながら、オルガは今にも泣き出しそうな顔になっていく。


「ありがとね。性格は絵画とは似ても似つかないんだけど」

「そのあなたが、どうしてこんな場所に?」

「冒険者をやっててさ。ダ・ヴィンチの絵がヤバかったから、直接退治しに来た」


 ことの成り行きを、リザは適当に話す。


「ダンナ様には内緒で?」


「夫なんて、この世界にいるための詭弁さ。人間の男と暮らしているっていうなら、害がないって国に思ってもらえるかなって、名前だけ借りてるんだ。相手は死人だしね」

また、リザとは知り合い程度の関係だったらしい。


 聞けば、ジョコンダ氏はモナ・リザ完成直後になくなったという。また、リザとは知り合い程度の関係だったらしい。


「あなたが、アン王妃をそそのかしたわけではないのですね?」

 確かめるかのように、オルガはリザに詰め寄った。


「とんでもない! ただ巻き込まれただけなのにさ、全部解決しやがった。あたしたちがどうかなってしまったら、代わりにフランスを守ってくれるだろうって予感はしていたけど」


 リザは、アンを買っていたようだ。

 それゆえ、アンを危険に遭わせられないと思ったと推測される。


「では、今後はちゃんと連絡できるように、ギルド以外のアジトを設けましょう」


 アンの提案に、その場にいる全員が首をかしげた。

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