第三夜

彼女は緑がよく似合う。

生い茂る草木は彼女を囲み、縁取りをしているようにみえる。

太陽光が、鬱蒼の隙間からチラチラと彼女を覗いている。

そう彼女は太陽の目すら離さないのだ。

一面の緑の中、彼女はゆったりと歩いている。

歩くと同時に周りが歌う。

彼女は今指揮者になっている。

小鳥の音も、木々の声も、今は彼女が操っているのだ。

オーケストラの邪魔をしないように、僕はただじぃっと止まって待つ。


しばらく待ってから、彼女との距離がちょうど顔が認識出来るか出来ないかのラインで彼女が立ち止まった。

くるりと振り返り僕を凝視しているようにみえる。

まるで「さあ君のソロパートだよ」と言わんばかりに明らかに僕のことを待っている。

僕はそこに無い勇気を、あたかも持っているようなていで演奏した。

ざぐり、ざぐり、と土と草を混ぜて踏んでいく。

定かではないが、僕が彼女をほうへ歩き出したとき、うっすら口角が上がっていた。そんな気がする。

ようやく彼女のもとまで来た。

高くて小さな鼻、少し薄めの唇、ぱちくりとした大きな眼。

うん。改めて見るとやはり整った顔をしている。

テレビに出てくる有名人よりよっぽど美人だ。


そんなことを考えてる間に、彼女はまた歩き出した。

今度は僕も一緒に演奏しよう。

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夢十二夜 keびん @momo10nanami03

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