第71話 鈴木の死

 舞台は変わり、ケルベ王国を抜けた先の平原。鈴木は走った。


「はっ……はっ……な、なんで私がこんな目に……」


 振り返ると龍王はただただ空高くから見据えていた。鈴木を攻撃はせず、かと言って逃がしたりはしない。まさに捕食者に相応しい振る舞い。獲物を弄んでいる獣だった。


「ち、ちくしょう……舐めやがって……」


 鈴木は震える足を、途切れ途切れになっている息を無視して、休まずにただ走る。


「技能……発動……。!! こ、これは……ふふふ、なるほどね。読めたわ。私の未来はまだ負けてはいない!」


 鈴木が見た未来は、ケイとユイが一緒になって背中を向けて帰っいる。つまり、この場に2人は来て、何かしらがあり、帰っているということ。


「もうすぐ、もうすぐに帰れる! さぁ、いつでも来なさい!」

「おう、待ったか? 鈴木」

「!?!?!?」


 振り向くと、そこに立っていたのはケイとユイ。


「い、いつの間に……」

「お前が遅いから抜かしてしまったな。少しだけ話がしたい。お前は世界樹の実を食ったな?」

「そうだ……それでこの力を手に入れた。見渡せる未来は初めは5秒から1時間に変わり、武器も最強だ。こういう風にな!」


 鈴木は腕を振り上げると同時に細い針を飛ばす。暗器。それが目に見えない攻撃と一撃必殺を兼ね備えつつ、先の見える鈴木には効果てきめんで、まさに敵無し。

 だった……


「ユイ」

「ん、『風壁』」

「な、なに!?」


 どんなに小さな攻撃も当たらなければ意味が無い。鈴木の投げた針は空高く舞い、ユイの小さな手に落ちた。


「ん、これ猛毒。危ない」

「そうか。なら、貸してくれ」


 ケイは受け取った針を自分の手に刺した。それを見た鈴木は高らかに笑う。


「あはははは。やったわ! 馬鹿ね。解毒不可能な程の猛毒。私にだって解毒薬はないのよ。これでお前はおしまいだ!死ね!」

「くっ……ユイ。くれ」


 ユイがバックから取り出したのは、小さな瓶。毎度お馴染みの万能薬。それをケイは一気に流し込んで、立ちくらみをすぐさま納めた。


「な、なん……で?」

「よし、これでこの毒の抗体が作れた。鈴木、お前は別に何もしてない。だが、死ぬんだ。それは俺の気まぐれであり、俺を怒らしたことでもあり、俺の復讐だからな。ずっと……ずっとこの時のために生きていた」

「ま、待ってよ……なんのこと?」

「死ね」


 鈴木が訳もわからず首を傾げていると、超高速の槍がケイとユイの間を抜け、心臓を貫いた。

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