英雄会議

第72話 亜人の国ケルベ王国と新たな出発

 それから半日過ぎた頃。ケイはケルベ王国に住む全ての奴隷達の鎖を1つに繋ぎ、『再構築』で外した。


「……おめでとう。お前らは自由だ」


 大きな歓声と共に人間狩りが始まった。龍王に殺されなかった人間は、開放された亜人達によって次々と始末され、ケルベ王国は亜人の国となった。

 街の中央の広場には人間の死体の山。その頂点には鈴木の死体。


「復讐……2回目。ふはははは。おい、お前ら! 離れてろよ! ユイ、やれ」


 亜人全員が離れたのを確認すると、ユイは魔法を発動する。


「……『インフェルノ』」


 空から降る巨大な火柱が死体の山に落ちた。メラメラと燃える赤い炎は急激な温度を発生させ、空の方から次第に分散して消えていく。それは花火のような美しさと共に、亜人の心が次々と浄化されていくような景色だった。


「皆、今日が……今日からが、新たなケルベ王国の始まりだ!」


 ケイの宣言と共に、更なる大きな歓声が湧き上がる。


「そして、この国を救うために頭を下げ、皆のために力を尽くしてきたやつが王だ。それは……フミだ。ユイ」

「ん、技能発動『転移』」

「ん!?!?!? こ、ここは……どこ……なのですか?」


 ユイの技能によって、全ての亜人の前に出てきたフミ。何が起きたかわからず、キョトンとしているが、そんなことはお構い無しに周りの人々は感動している。


「うぉぉぉ……フミ様だ……」

「フミ様……フミ様だ。本物だ……」

「「「「うぉぉぉぉぉお! フミ様!!!」」」」


 突然現れたフミに亜人達は奇跡を見ているような目で称えた。一方、フミは未だに混乱しているが、理解はしている。


「んじゃ、あとは任せたぞ。フミ」


 ケイの一言で察したフミは全力でしがみつく。


「ちょ、ちょ、ちょ! ちょっと待ってくださいよ! こんなの聞いてないですよ!」

「今日からお前がこの国を治める主だ。頑張れ」

「いやいやいやいや! そんなこと……って、わぁぁぁあ!!」


 ケイの足にしがみついていたフミを周りの亜人たちは引き離し、壊れた城の先。ケルベロスを称える神殿へと連れていかれた。


「最後の最後まで無茶ぶりもいい所ですよぉぉぉぉぉお!!!!」


 遠くなるフミの声を聞いて、ケイはユイと目を合わせる。それを察して、ユイは一言。


「ん、ペット来て……」


 広場の中央。インフェルノによって、跡形もなく無くなった死体の山の上から龍王は舞い降りた。


「じゃあ、行くぞ。目指すは首都。英雄会議に乗り込むぞ!」

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狼少女と復讐者 マル @Niwakou

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