帰ってきた、人間界。

第40話 不死鳥vsケイ

「えっと……?」

「あなた達、あの鳥と戦うのよ」

「……ん……それは難しい?」


 相手は不死鳥。つまりは不死身。炎が形作られて出来た霊鳥。立っている場所は常に燃え、凄まじい熱気を今もずっと吐き出し続けている。


「さぁ、どっちがやる?」

「ユイ、どうする? ビビってるなら先に行くぞ?」


 前を歩こうと1歩進むとグイッと引き返された。後ろを見ると、ユイが服の端を引っ張って、ケイが進むのを止めていた。


「……むっ、ビビってない。ケイこそ、怖いなら後ろで見てて」

「はっはっはっ……ユイ、無理すんなよ? ビビってるなら引いとけ」

「……そっちこそ、怖いなら私に任せて」


 お互いにだんだんと力が強まっていき、仕舞いには、服が持たなそうな程の力が反発し合っていた。朗らからな目から徐々に敵視する目に変わっていく。


「……離せよ、ユイ」

「……ダメ、私が先」


「まだか!」と不死鳥が痺れを切らして待っている。が、2人は目にもくれず、お互いに睨み合いなが、服が破れないギリギリの程度で、力を最大限行使している。


「埒が明かねぇ。あれで勝負しよう」

「……わかった」

「よし、ルールは1度きり。勝った方がい勝ちだ」


 後ろでユイの母親がニコニコしながらこちらを見ているのを、全く気にせず2人は構える。

 ケイは拳に力を貯め、攻撃するかのような構えで……。ユイは、腕をクロスさせ、手を結び、上にあげる。


「行くぜ!」

「……いつでも、よし!」


「「最初はグー! ジャンケン──」」




「待たせたな、第5位様?」

「ふん、着いてこい。場所を変えるぞ」


 走って約1km先にあるちょっとした平原で、不死鳥とケイが互いに5mとるほど離れた場所から睨み合っていた。


「お前ごとき、すぐにでも倒せる」


 余裕なのか、地面と1m浮いた場所で羽ばたいて、ケイを見下ろしている。おまけにいつでも攻撃できるように、しっかりとくちばしには火の玉が用意されている。


「だったら──」


 ポケットから正方形の粒を取り出し、すぐ様『再構築』で槍の形にし、構える。


「やって……みろよぉぉ!!!」


『怪力(極)』と『精密射撃(大)』の技能同時で正確に、かつ至近距離を最高速で首を狙った。

 槍を放つと同時に、不死鳥も口に溜めた火の玉をケイ向かって放った。

 お互いの技がぶつかり、槍は火の玉を貫通し不死鳥に。貫通された火の玉は、直後、一気に拡散してケイに。


「うわぁぁぁぁぁ!! あ、熱い!!」

「フンっ、我の火の玉を威力はここからだ。燃え上がれ!」


 飛んで行った槍は確かに不死鳥の首を貫いた。だが、それは不死鳥の纏う炎と共に再生し、一瞬で元通りになった。

 それに対し、ケイは拡散して飛んできた火の玉を、全方向から受けた。炎の威力は不死鳥の掛け声と共に上がり、連続で爆発が起こった。

 何とか火を避けようと、地面に転がりこみ、5度目程で着いた炎と同時に収まった。


「はぁ……はぁ……な、なんでだ!?」

「ふん、当然だ。我は不死鳥。この体は炎で出来ている。故に、この体の炎が燃え続ける限り、炎によって再生し、ありとあらゆる攻撃は我の前では無力となる。何人たりともこの体を傷つくことは出来ん……はーっはっはっはっー!」


 余程、自分に自信を持っているのか、体の秘密をベラベラと話し、自慢をするように何度も何度も語ってくる。


「そうか……だったら、傷ついたら笑いもんだな……あははは!!」

「き、貴様……人間ごときがぁぁぁあ!! 我の攻撃を食らって瀕死の分際で、喧嘩を売るとはいい度胸だなぁ!? ぁあ?」


 不死鳥はケイの安い挑発に乗って激怒した。体はさらに燃え上がり、色がだんだんと濃くなっていく。

 一方、ケイは格上の相手を怒らせたことへの恐怖とワクワク感でいっぱいだが、それを抑えて、ポケットから粒を出して3秒後に『再構築』でハンマーの武具に変える。


 そして、やけどを負った皮は、襟の後ろにあらかじめ『再構築』で小さく隠していた湖の水が入った容器ごと口に含む。


「ほぉ……ライフウォーターか」

「そんな名前だったのか……まぁ、これで元に元通りだ。やろうか」


 火傷で所々に出血が起きていたが、湖の水を飲むことであっという間に回復し、第2ラウンドが始まった。

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