第39話 化け物達の集会

 歩くこと3日。ついにケイ達は見つけた。魔界の王様、魔王様を……。


「会いたかったぜ、魔王様」


 魔王様──そう呼ばれる者は、気高く、美しく、何よりおぞましがった。

 赤いシッポに、深緑色の龍の胴体に、4本の鹿のような茶色い足、馬のような黄色い顔、そして、黒い1本の禍々しい角が生えていた。


「…………」

「ユイの技能がなくても分かるぜ、お前が魔王だろ? おい……でかい癖につれねぇな、なんか話せよ」


 大きさは、だいたい20m。辺りには、かつてユイが出した青い電気が常に辺りを囲っており、禍々しい角には特に集中している。

 座って見ているだけなのに、押しつぶされそうな眼差しといつでも瞬殺されるイメージが、ケイに出来てしまった。


「くっ……負けてたまるか! お、おい、何か──」

「口が過ぎるぞ、人間」


 魔王とケイ達の間で小さな炎ができ、一瞬で巨大に膨れ上がり、鳥の形を作っていく。

 鶏のような鶏冠、黄色の嘴、炎で出来た赤い羽根に、常に全身が燃え続けている。形作り終えると、魔王様に頭を下げ、ただただ「参りました」と一言言っとのみだった。


「おい、お前は?」

「ん? 我か? 忌まわしき人間よ、聞くが良い。我は火山の地帯を収める長にして、魔王様の直属の12守護者の1人だ」


 ケイを見向きもせず、魔王様に頭を下げ続けている鳥は、言葉を話した。意思疎通をしたのだ。

 話せる魔物は強いということを知っているため、チャンスと思ったケイは攻撃体制を取ろうとした瞬間、隣に立っていたユイが、急にケイの手を引っ張って後ろに引いた。


「待て、ユイ! 何すんだ!?」

「……これは……ヤバすぎる」


 ユイの『気配察知(極)』は極めすぎため、地帯の半分以内にいる物の全ての気配を感知出来る。ユイが察知したのは、目の前にいる2匹の化け物と猛スピードでこちらに向かってくる同じレベルの化け物7匹だった。


「……ここは危なすぎる。来て、ケイ!」

「なんでだ、ユイ! こんなチャンス滅多にないぞ!」

「……3日前に消えた気配が、一切にこっちに向かってきてる」

「だからって──」


 ユイがあまりにも焦るって手を引っ張るため、仕方なくケイも走った。言うことを聞いてくれたことに安心しつつ、ユイは話を続ける。


「……多分、消えたんじゃなくて、入らないギリギリの範囲から抜け出されてた………………来る」


 魔王様が住む山岳地帯に大きな衝撃波が、同時に7つ走った。それは全て空から降ってきた7つの巨大な体から繰り出される振動によるものだった。


「「「「「馳せ参じました、魔王様」」」」」


 同時に7匹の獣が、声を合わせて言い放つ。

 右腕だけが以上にでかい白くて巨大なゴリラ。翼の生えた馬。ムカデのような足がいくつも生えたコブラ。兎のように発達した足を持つ熊。蛇のような長い首に頭が6つあるワニ。全身が漆黒のドラゴン。そして──


「……ママ」

「ん?……え? はぃ?」

「!! あらあら、ユイー!」


 ユイの母親はユイを見つけた途端、持ち場を離れ、2人が何も反応出来ない速さで目の前に現れ、抱きついた。


「ん〜!! この感触、流石は私の娘だわー! なんて可愛いのかしら!」

「……ママ、暑い……」

「あら、ケイだったかしら? お元気そうね」

「ど、どうも」


 明らかにスピードが桁違いに上がっており、お腹には膨らみがないことから用意に察しが着いた。


「お、おめでとうございます」

「あら、気づいたの? ユイ、またお姉さんになったわね」

「……? あっ…… ママ、おめでとう……っ」


 出会ってそうそうに微笑ましい会話をしていると、残りの獣と魔王様は品定めをしていた。そして、それが終わったのか燃えている鳥が代表して一言。


「おい、狼! そんな奴らほっといてこっちへ来い」


 ただ、こっちへ来て欲しい。そう思って発した言葉が、娘溺愛主義の、フェンリル族の長であるユイの母親の怒りに触れた。


「小僧、誰に向かって口を聞いている……?」

「やんのか、ババア?」

「たかたが不死鳥ふぜいで5位が、私に喧嘩をふっかけるといい度胸じゃない?」

「あぁ? 訳わかんないこと言ってねぇーで、早くこっちへ来いって言ってるのが聞こえねぇーのか? そんなカス共なんか構ってんじゃねぇーよ!」


 本日7度目にして、最大の衝撃波が山岳地帯を、否、魔界全体を揺らした。しかも前にユイの父親にやった時以上の強さで……。

 魔王様の直属の12守護者、第2位 フェンリル。上位の中でも上のため、争っている2人以外は誰も口を挟めず、全員がただ見守っていた。


「……あ、そうだわ。あなた、この子達と戦いなさい。そして、謝りなさい」

「? 何を言って──」

「見込みがあるから、まず先にこの子達を人間界に送り込みましょ。力があって小さい。最適じゃない。そして、それが値するか否かはあなたが決めなさい」


 勝手に話を付けられ、置いてかれいるケイ達だが、「戦って、食える」ということだけはわかるので、無言のままでいる。


「そんなの、否──」

「戦ってから決めろ」


 口ではこう言いながらも、5位と2位では力の差が圧倒的に離れすぎおり、逆らったらタダでは済まないことは承知しているため、不死鳥がとる選択は1つしかなかった。


「ぐぬぬぬぬ……分かった。お前らごときなら、いつでも殺せる。選べ、どっちから死にたい?」

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