第31話 二人の関係性
無事に地獄のランニングトレーニングを回避して、いつものように望結と手をつなぎながら駅へと歩いていた。
俺たちの数十メートル前では、稲穂を含むメンバーたちががやがやと楽しそうに話しながら歩いていた。
結局稲穂のゴールが決勝点となり、2-1で紅白戦は勝利。事なきを得たのと同時に、俺たちの信頼関係を改めて確認するような試合にもなった。
「青谷くん、今日もキレッキレだったね!」
「そんなことないって」
「ある!もうね、毎日見てるけど、どんどんうまくなっていってるし、高橋君とのコンビネーションもぴったりだし、かっこいいなぁって!」
好きな女の子からカッコいいとストレートに言われると、流石に照れる。
俺は顔を逸らしながら右手で頭を掻いた。
「もう、青谷君と高橋君の連携は運命共同体のような感じだよね!」
望結はさらに早口で力説してくる。
「そうかな?まあ、昔から一緒にやってるから、お互いにしたいことが分かってるだけだけどなぁ・・・」
「それがいいんだよ!見ててこっちまで楽しくなってきちゃうくらいなんだから!」
望結はなおも興奮してそう言ってきた。
「ま、まあ・・・そう思ってくれてるなら、ありがと///」
「うん!」
周りからどう思われてるとかあまり気にしたことなかったから、そう言われると嬉しさもあり、恥ずかしさもあった。
「でも・・・」
すると、突然今の今まで興奮気味だった望結が顔を下に向けてしょんぼりとしていた。どうしたのかと様子を窺っていると、顔を上げて俺の方を見つめてきた。
「私たちも・・・それくらいの関係になれるかな・・・なんて///」
えへへっと恥ずかしそうにしながら破顔する望結・・・
予想外の言葉に呆気にとられていたが、望結の言ったことが可笑しく思えてきて、ふふっっと笑ってしまう。
「あぁ!笑わないでよもう!///」
「いやっ、ごめんごめん。つい・・・」
「もう・・・」
望結は少しムスっとして頬を膨らませていた。そんな表情も可愛くて愛おしくなってしまう。
俺はつないでいた手を離し、ニコっと優しく微笑みかけて、望結の頭にポンっと左手を置いた。
「そうだな・・・俺と望結は、俺と稲穂とのコンビネーションより、お互いのことが理解できるような関係性になれるさ」
俺の返した言葉が意外だったのか、キョトンとして俺を見つめていたが、次第に恥ずかしくなってきたのか、頬を真っ赤に染めてそっぽを向いて、「うん・・・///」とボソっと言って首を縦に振って頷いた。
◇
「じゃあ、天馬君!またね!」
「うん、また」
望結は駅の改札口をくぐり、姿が見えなくなるまで俺の方へ手を振っていた。
俺も望結の姿が見えなくなるまで微笑みながら手を振り返した。
「よしっ。帰るか・・・」
望結がいなくなると、どこか心にポカンと穴が開いたように虚無感に襲われる。
一人になった寂しさのようなものを感じているのだろうか?
だとしたら、俺は望結のことを本当に心の底から好きだと思っている証拠だ。
明日になったらまた会えるし、後でトークでチャットできるし、この一人の時間をポジティブに捉えようと考えて、家に向かって歩き出そうとした時だった。
柱のところで、俺のことをじぃっと睨みつけている人影があることに気が付いた。
目を向けると、そこに立っていたのは、
「藤堂さん!?」
驚いて彼女を見つめると、まだ制服姿で家に帰った様子はなく、短く折りたたんだチェックのスカートから伸びる日に焼けた褐色色の健康的な太ももをさらけ出しながら、じぃっと俺を見つめていた。
「ちょっと話があるんだけど・・・」
そう一言言い残して、俺は踵を返して歩き出した。
どうやらついてこいということらしい。
俺はなんだろう?と疑問に思いながら、藤堂さんの後を追っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。