第14話 気にくわないやつ・・・

 大変なことになってしまった。俺はソワソワとしながら学校へと向かっていた。


 まさか、あのAV女優の渡良瀬歩からリアルに結婚を申し込まれるとは夢にも思っていなかった。しかも、俺はその返答を受けてしまった。これは非常にまずい事態である。何故ならば、俺には望結という彼女がいるのだから。それに、まだ彼女に自分がスペシャルヒューマンであることを伝えることが出来ていないのだから。

 これは早急に説明が必要だった。とりあえず、朝は広瀬さんのせいで時間を取られて登校時間ギリギリになってしまいそうだから、とりあえず放課後教室での時間の時にちゃんと話をして・・・

 俺はこの後の段取りを考えながら教室までの道を歩いた。


 朝のHR開始のチャイムと共に、なんとか教室に入ることが出来た。

 先生が教室の前の扉から入ってきて、俺も何とか自分の席に荷物を置いて着席した。


「はぁ~」


 朝の出来事の疲れからか、思わずため息が漏れてしまう。


「おはよう、天馬くん。大丈夫??」


 隣の席から、俺の彼女である綾瀬望結が心配そうに声を掛けてきてくれた。今日も、可愛らしいクリっとした瞳を向けてきていた。はぁ…俺はこの後、目の前にいる純粋無垢な女の子に嘘をついていたことを白状しなくてはいけないんだよなぁ・・・


「おはよう、綾瀬さん、大丈夫だよ」

「そう?でも顔色がすごく悪いけど…」


 この後のことを考えてしまい、俺が顔に出てしまっていたようだ。


「大丈夫、気にしないで!」


 俺は無理にでも微笑んで見せた。そうでもないと、今は耐えられる気がしなかった。


「そう?ならいいけど…」


 すべて納得してくれたようではないが、望結は俺を心配するのをやめて、教壇に立っている担任の先生に向き直った。

 俺も机の上に置きっぱなしだった鞄を下において、身支度を整えながら所連絡に耳を傾けた。



 ◇



 登校10分前になっても、アイツはいつもの席に現れなかった。

 いつもなら空気のように扱っているにも関わらず、今日はアイツのことで虫の居心地が悪くなっていた。


 昨日、私が見たのは目を疑うような光景だった。

 それは、男子の中でクラスの天使といわれている綾瀬望結と、ボッチで陰キャの天馬青谷が二人して仲良く教室でイチャイチャしていたものであった。


 ・・・陰キャが恋するとか、気持ち悪い。調子乗ってるんじゃないの??

 私は知らないうちにイライラを募らせ何度も指で机をたたいていた。



「どうしたの麗華れいか??さっきからずっと後ろの方睨みつけて・・・」

「ん~?あぁ~」

「??」


 友達が心配してくれていたが、私は生返事を返すだけで、その目線を離さなかった。すると、HR開始のチャイムが鳴った。それと同時に奴は教室の後ろのドアからひっそりと入ってきた。そして、何事もなかったように自分の席に座った。

 担任が教室のドアを開けて入ってきたので、私も大人しく席に戻る。


 自分の席に戻ってからも、チラっと横目で奴を見続けていた。すると、隣の席の綾瀬さんが心配そうな表情で奴に声を掛けているのが見えた。

 何度か会話を繰り返して、お互いに前を向いてしまった。


「…」


 教室で二人コソコソとしやがって…あーあ、なんか面白くないなぁ…

 私の頭の中にはそのような感情が芽生えていた。


 天馬青谷・・・ここ最近までボッチだった癖に・・・気にくわない…1週間前くらいから急に綾瀬さんとおはようの挨拶を交わすようになり、突然ボッチ生活から抜け出しつつある。大体なんでよりによって綾瀬さんなわけ??意味わかんない。


 私にとっては、綾瀬さんも正直気にくわないので、余計にイライラが募るばかりであった。


 担任の話が終わり、1限の授業の準備を始める。1限は移動教室の授業だったので、私も教科書や筆記用具を持って席を立ちあがった。

 再び奴の様子を眺めると、何事もなかったかのように一人でひっそりと教室を抜け出して移動教室へと向かっていた。


 ・・・さらに気にくわない…好き勝手裏でコソコソとやりやがって…

 私の怒りは頂点に達していた。


 どうにかして、奴を恥さらしにすることは出来ないだろうか…そう考えた時、私は一ついい案を思いついた。


 それを実行するために、とある人物の席へと向かい立ち止った。


「隼人・・・」

「ん?どうした??」


 私が声を掛けえたのは、クラスの一番の人気者、サッカー部の宮原隼人みやはらはやとだ。正直、女ったらしの彼はあまり好きではなかったが、彼に頼めば大抵のことは何でもしてくれるのだ。一応私も、可愛い部類に入るから。


「ちょっと、相談があるんだけど、聞いてもらえるかな?」

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