遅刻の迷宮
「遅刻遅刻~」
委員長のたわわな胸を一秒でも多く拝みたかった僕は、目覚ましを止め、
妙だ―――とは思ったものの、胸を拝まねば僕は死ぬ。ので、再び目覚ましを瞬時に仕留め、「遅刻遅刻~」と食パンをくわえ、夢の通りに、オレンジ色のカーブミラーがぽつんと立ちすくむ十字路へ駆け込み、そして再びベッドに目覚めた。ループに
どうしてループへ
ループ世界から抜け出すため、ありとあらゆる方法を試すことにした。十字路への突入がループ原因なのではと思い迂回路を駆けたり、その日に外出することそのものが原因なのではと、母の怒号を無視するまま、延々と部屋に引き籠もったりもした。が、結局のところどうしたって、僕はループに
「きっともう、どうしたって抜け出せぬのだ」
何百回もの試行の末に悟った僕は、死を選ぶことは怖かったので、抵抗することそのものを諦めた。繰り返される時間に自己を溶かし、廻り続ける日々を選んだ。目覚ましを止め、寝坊を叱咤し、食パンをくわえ「遅刻遅刻~」と、オレンジ色のカーブミラーが待つ十字路へ駆け込む―――そんな日々を無心で続けた。
が、とうとう限界がきた。ある日僕は本当にどうしようもなくなって、十字路の前にへたりこんだ。虚無でいることそのものに疲れた僕は、気付けばわんわんと泣いていた。
「死んでもきっと、死ねないだろうなあ」
―――せめて最期に、委員長のたわわを拝みたかった
無念のまま、喉元へ包丁を突きつけたとき―――僕はある場所に『あるもの』がずうっと映っていたことに、このときようやく気が付いた。
どうしていままで気が付かなかったのだろう。十字路の奥に据えられた、オレンジ色のカーブミラー。その中央に。あの、たわわな胸―――僕の大好きな胸を有する委員長が、ばろろんばろろん胸を弾ませ、僕と同じく、十字路へだあっと駆け込むさまが、はっきり映っていることに。
「―――
『遅刻をする食パン少女との衝突と出逢いの現象―――それを正しく引き起こすためには、もう片方の人物、つまり男性側が、食パンをくわえていてはならない』
磁石のS極とS極が、決して出会えぬのと同じだ。遅刻をしたたわわ美少女が、食パンをくわえるまま勢いよく十字路へ駆け込んでくるならば、こちらもそれに
『委員長のたわわ胸と運命的に出逢うこと』
これこそがたわわの神が引き起こしたであろうこのループ世界から抜け出すための、たったひとつの解法なのだ。そんな馬鹿なと思うだろうが、僕にはこれしか救いがない。信じるしかない。
「たわわの神よ。私をたわわの先へと、
僕は神に祈るまま、運命的な出会いをすべく、食パンをくわえぬ少年として、十字路の中心へ突入した。
―――きゃあ
食パンをくわえ、究極的に理想的なたわわ胸を有する委員長が、眼前に現れた僕に驚き悲鳴を上げている。
この解法は正しかった。
僕の勝ちだ。
―――という確信もつかの間、「きゃあ」と悲鳴を上げた委員長の背後から、ナンバープレートを顔面にくわえた凄まじき形相の4tトラックが、「遅刻遅刻~」と云わんばかりに猛スピードで突進してきて、勢いままに僕を飛ばした。
「ぐはあ」
五〇mはヤングをし、僕は地面へ
異世界そばかすたわわ美少女は、何故かこの世界にも存在するのであろう、六枚切りくらいの厚みの食パンを口にくわえるまま、僕の頭を膝へのせ「大丈夫ですか」と心配そうに、僕をじいっと見据えている。
「
僕は思い、思って彼女のたわわを
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