第11話

私達家族は東京の下町に引っ越した。東京はなんだか窮屈にかんじた。北海道に比べ細い道路、人の多さなど。それでも馴染んでいくしかないと思った。そんな中4人目の女の子が生まれた。結婚して数年の間に6人家族になった。私は育児で更に忙しい毎日になった。上の男の子2人は幼稚園に通い始めたがあまり人付き合いが得意でない事、幼稚園のママ達はある程度はママ友関係があるようで私はその中に入れなかった、というより入ろうともしなかった、苦手だった。Yちゃんは元々横浜出身の為東京への赴任は嬉しい事だったようだ。会社の飲み会以外でも学生時代の友達と飲みに出かける日もあり、私は慣れない東京、育児、子供を通してのママ友の付き合いなどのストレスで北海道の時より増してYちゃんにストレスをぶつけるようになった。そんな自分が嫌だった。4人目の子供が生まれて数ヶ月経った頃、毎日のように頭痛がするようになった、近所の内科で頭痛薬をもらったが全く効果がなかった。頭痛に加え、疲れをひどく感じたり、イラだったり、憂鬱な気分になったりで違う内科に行ってみた。そこで医師が「よく効く薬を出してあげよう」と言われ出された薬は精神安定剤だった。薬を飲むと頭痛が治った。鬱病の再発だとわかった。再発だとわかるとなぜか私はこんな窮屈な東京へ来たからだと思うようになり更にYちゃんへあたるようになっていた。そんな自分に自己嫌悪しながらもどうにも出来なかった。そんな中、私は彼の事を思い出した、今何をしてるだろうか?彼は私を覚えてくれてるだろうか?今まで結婚しても忘れてなどいなかったが声が聞きたくて仕方がない気持ちにかられた。彼の電話番号が変わっていないのを願いながらある日彼に電話をした。彼は電話に出てくれた。「私だけどわかる?」彼はすぐに「わかる」と言った。もう声を聞いただけで私は胸が張り裂けそうだった。5年以上経った彼との会話は涙が出るくらいに懐かしかった。でも彼には結婚したと言えなかった。私はずるい女だ。幸せな家庭があるのに彼を忘れられない。だがどうする事も出来なかった。以来彼はたまにではあるが電話をくれるようになり嬉しかったがどうしても結婚してるとは言えなかった。Yちゃんには感謝しているのにどうしても忘れられない彼。そんな中Yちゃんは鳥取に転勤になった。始めは単身赴任だったが私達も引っ越す事にした。正直東京という窮屈な場所から出たいのと単身赴任中Yちゃんの浮気したら?なんて思う気持ちが湧いてきて不安だったからだ。自分は彼に心をよせていながらYちゃんには私一人でいて欲しいなんて虫が過ぎる話だ。しかし現実子供が四人もいて離婚などできるわけもないし、Yちゃんには本当に感謝していたので彼に対してどうこうするというまではなかった。なぜならYちゃんなしでは生活出来ないだろうしYちゃんは私、子供を本当に大切にしてくれていたからだ。私達はYちゃんのいる鳥取へ引っ越しを決めた。そして引っ越しをした。だがここからが鬱病との闘いになる。

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