第10話
Yちゃんと入籍して千葉へ来た私は結婚指輪を買いに2人で東京へ行った、結婚指輪の相場より高い指輪を買ってくれた、指輪が出来て指にはめてもらった時、私は指輪の深みを感じた。Yちゃんと生涯一緒にいるのだと…。Yちゃんは休みの度に私を映画や水族館、東京、千葉周辺、色々なところに連れて行ってくれた。気づくと私は精神安定剤を飲む事すら忘れていた。病気は治ったのだと思っていた。
千葉へ来て2ヶ月程経った頃、私は妊娠した、その夜仕事から帰りお風呂に入っていたYちゃんの扉を開け「私、妊娠したよ」と告げた、彼は湯船に浸かりながら少しボーっとして「良かったじゃん」と言った。まだ妊娠した実感はなかったが良かったと言われて嬉しかった、今度は望まれた命だからだ。安心して産んでもいいのだと。Yちゃんの両親が結婚式は挙げなさいと言ってきた。正直Yちゃんの両親は私が結婚相手だということに不満があるようだった。大学まで出させて大手企業に入った息子になぜ高卒の私が…と思っていただろう。私もまたYちゃんの両親に馴染めなかった。育ってきた環境が違いすぎるからだ。結婚というものは2人だけの事ではないと結婚してから実感した。お腹の子供も6ヶ月になろうとしていた頃に式を挙げた。ドレスもなんとか入った。彼の方の来客は上司など偉そうな人達ばかりだったが皆が祝福してくれた。ドレスを着た喜びは今も覚えている。幸せになりたいと心からそう思った。その夏私は元気な男の子を産んだ。今まで経験したことのない痛みだったが無事に産まれて良かった。Yちゃんは赤ちゃんを初めて抱っこした感覚をずっと忘れないと言っていた。私は赤ちゃんを産んでYちゃんが喜んでくれた事で少し恩返しが出来たように感じた。Yちゃんと赤ちゃんと3人の生活は幸せだった。私が生まれ育った家族より何倍もこの新しくできたYちゃんと赤ちゃんとの3人の家族生活は温かかった。日々安定して生活もお金も不安なく暮らせる、それが私には幸せすぎるくらいに思っていた。この幸せをくれたYちゃんに心から感謝していた。そして毎日穏やかで温かい生活が半年過ぎた頃、私は少し体調を崩した。微熱があり病院へ行くと「風邪ですね」と言われたがなかなか微熱は下がらずもしや?と思い妊娠検査をすると2人目を妊娠していた。少し驚いたがこれもまた嬉しい事だった。妊娠がわかって間もない頃Yちゃんは北海道に赴任が決まった。私と赤ちゃん、お腹にいる新しい命と共に私達は北海道へ引っ越した。北海道は広大な自然、緑に囲まれ冬には大雪ではあるが、その雪景色さへも私には素晴らしい景色だった。北海道は不思議なくらいに私を癒してくれた。今現在でも出来るなら北海道でもう一度暮らしたいと思うくらいだ。北海道へ来て次男が産まれた10月末だったが北海道では雪が降っていた。Yちゃんは長男が生まれる前から女の子が欲しいと言っていたがまた男の子だった、それでも新しく生まれた命を喜んでくれた。そして3人目を妊娠した。三人年子だ。三人目はYちゃん待望の女の子だった、Yちゃんはとても喜んでいた。Yちゃんと三人年子の生活、育児に追われて忙しさと疲れはあったが幸せに暮らしていた。しかしこの頃から毎日育児に追われるだけで1日が終わり、疲れも溜まっていたのか少しずつストレスを感じるようになっていた。Yちゃんは会社の飲み会などによく出かけていたが、その事にイラつくようになった。私は育児だけで出かける友人も出来ず、せいぜい食品を買物に行く程度…、会社の付き合いとはいへお酒を飲んだり、交流したりYちゃんはいいよな…と思うようなりYちゃんにあたるようになってきた。ストレスを感じながらそれを何処へ発散できるでもなく、それをYちゃんへぶつけるようになった。そんな自分が嫌だったがどうにも出来なかった。そしてYちゃんの東京赴任が決まる。と同時に4人目を妊娠していた。私は北海道から出たくはなかったが仕方ない事だった。こうして東京へ引っ越す事となる。そしてまた鬱病が再発するとも思ってもいなかった。
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