第7話
鬱病と診断され私は病院に通院する事になった。仕事も辞め日中はカーテンも閉め切ったまま何処にも出かけない毎日を過ごすようになった。夜は眠れず何故こんな事になってしまったのか?とマイナスの事しか考えれないようになった。カウンセリングの度に薬も変わったり増えたりした。この頃から睡眠薬がなければ眠れないようになった。だが現実はそんなに甘くない、仕事もしないで預金もない私には家賃などの支払いが頭を悩ませる。しかし仕事ができる気力はなかった。実家の親に相談しようかとも考えたが帰ってきなさいと言われるのはわかっていた。私はどうしても実家に帰りたくなかった。実家が嫌で出てきたのだから。カーテンを閉めた部屋でこれからの事、金銭的な事、考えても何も変わらないとわかっていながらグルグルと同じ事を考えて過ごしていた。その内私は死んでしまいたいと思うようになる。マー君は距離を置き、彼はどこにいるのかわからない。孤独だった、今まで寂しいと思った事などほとんどなかったが、とても寂しい気持ちだった。もうこんな人生終わりにしたいと毎日思い考えていた。病院から処方された薬を飲んでも楽にも前向きにもなれなかった。そんな毎日を過ごしている中である夜お腹が空いたので近くのマックへ行こうと外出する気分になった。確か夜の10時頃だったと思う。
マックへ行くには大通りがあり歩道橋を渡って行かなければならない、私は歩道橋を渡る為ゆっくり階段を登った。階段を登り切って何歩か歩いてふと下を見た、車が行き交っていた、それを見ていると、色んな事が急に思い出された、初めての彼、マー君との出逢い、Fちゃんとの電話で交わした会話、Yちゃんと行ったコース料理、おしゃれなバー、大好きな彼の顔、姿、声、そして最悪な出来事、中絶…。
ここからもし飛び降りたら死ねる、楽になれると脳裏をよぎったと同時に涙が溢れ出た。もうお腹が空いたとかマックとかは全く頭から消えていた。
死のう、死んでしまおう、泣きながら真剣に思い歩道橋の手摺りに手をかけた、あまり怖さは感じなかった。ただ涙で手摺りや行き交う車が滲んで見えた。力を入れて手摺りを再度強く握ったと同時に携帯が鳴った、なぜか私は携帯に出た。「やぁ、元気にしてる?」Yちゃんからだった。以前と変わらず明るい声だった。一瞬にして目が覚めた。「元気です」と答えた「何、泣いてんの?」と明るく聞かれた。海外から帰ってきて徳島県に赴任したとの電話だった。後は何を話したか覚えてないが、この状況での電話は奇跡だった。今も忘れる事はない。Yちゃんからの電話がなければ死んでいたかもしれない…。電話を切って、私はマックにも行かず泣きながらマンションに帰った。彼に救われたのだ。
翌日からもまだ気分は良くならなかったが少し自殺願望はおさまった。数日して彼から電話があった。神戸で飲み屋を経営すると。なぜ飲み屋なのか?夜の仕事なのか?聞きたい気持ちはあったがしばらく連絡もくれず別れたも同然のような関係で私達は付き合っているのか?と思ったが聞く勇気もなく、彼の報告だけ聞いて電話を切った。なぜか電話の後、彼の独立を祝う気持ちより寂しさの方が強かった。彼にとって私は彼女なのか?別れた彼女なのだろうか?これからこの思いが延々と続くようになる。聞きたくても別れた友達なんて言われるのが怖くて聞けないようになった。
日にちは経ち月末が近づいていた、家賃などの支払い時だ。預金で今月はしのげても来月はもう無理だったが働く意欲がなかった。そんなある夜Yちゃんから電話があり今の状況を話した。
彼はとてもあっさり言った。「助けてあげようか?徳島おいでよ、アパート借りてあげるよ」信じられない提案だった、驚いた、私は彼に甘えて頼る事にした。
そして後に私は彼と過ごし毎日を共にするようになる。
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