第6話
彼との付き合いが始まったが、彼と私の生活リズムは合わなかった。当時パン屋で働いてる彼は朝4時からの仕事で寝るのが早く日曜休み、私は7時起きだったので寝るのは遅く平日休み。
会えるのは私の休みで彼が仕事終わってからの2時間程度。せいぜいカラオケに行くかファミレスで食事をするくらいだった。それも月2日程度で。私はどちらかといえば毎日会いたいタイプ、彼は多分、たまに…でよいタイプだったかもしれない。そんなある日、私のマンションで会ってる時に彼がROREXの時計が欲しいと言いだした。自分は車でカードローンが限度額でいっぱいだからお金は毎月払うから買って欲しいと。私は忙しく働いていた割にはそれ程給料は高くなく、生活するのが精一杯で預金は殆ど無かった為そんな高額なものを買える余裕などなかったのに彼の勢いに流されて2人で時計を買いに行った、私の20回払いのカードローンで。その時私はもしかして都合良い女?…と脳裏をよぎったが、その時は既に彼にぞっこんだった。私は昔から貢ぐ癖があった、自分を嫌われたくないからだ。周りからすればそれはうまく騙されていると私の店のスタッフにも言われたがそれ以上に彼が好きだった。初めの2回位は現金でお金を渡されたが何だかそれも面倒くさくなってきて自分で払っていく事にした。でも何故かこの出来事はたとえ騙されていたとしても後悔していない。それは彼が大切に使ってくれていたからだ。彼と月に2〜3度しか会えない付き合いは続いていた。
話しは少し変わるが私は店では自分で言うのもなんだが、男性からよくモテた。いつものように妻子ある男性が髪を切りにきた。私は会話の中で通勤につかう原付のバイクが安くてないかな?と聞いたら次に店に来た時「安くて中古だけどあるよ」と言われてその原付を買う事にしたが乗り方すらわからないのでその人が仕事後に教えてくれる事になった。1時間ほど習って私のマンションまで誘導してくれお礼を言ってさよならしようと思ったら「コーヒーくらい飲ませてよ」と言ってきた。それもそうか…と思ったのと、彼は妻子持ちだからすっかり気を抜いてしまっていた、ところが部屋に入るなり強引に私にせまりSEXされた。ほぼレイプのようなものだった、私はその時男性の力には勝てないと知った、とても不快なSEXだったのと、一番目の彼のように暴力的な事をされるのが怖かった。彼は行為を終えると帰って行った。私が安易に部屋へ入れたのが1番の原因だとわかっているが、もうそれは遅すぎる結果だった。私は恐怖と不快さともう彼に会えないのではないか?と大好きな彼の顔が浮かんでその夜は相当泣いた。そしてこの件が私を狂わせる事になる。
そんな頃一本の電話があった、マー君からだ、マー君が結婚して2年も経ってない位の記憶がある。内容は「俺離婚した、色々あって…」との電話だった。また連絡し合おうと。誠実で真面目なマー君が離婚とは意外だった。その時マー君は精神病になっていたとは私は知らなかった。
私はその頃、彼ともっと一緒に居たいのと、仕事がしんどかった為、他の店に転職を考えるようになった。半ばレイプに近いあの人がもしかしてまた来客するのも嫌であり怖かった。そして私は会社を辞め違う個人店に職場を2回程変えたがどちらも長続きしない事になる。少しずつ私の歯車が狂いはじめていた。私はお金に余裕がなく、辞めた店に来客で来ていたスナックのママに誘われて昼間は美容師、夜は日付けが変わる迄スナックで働き始めた。体は相当きつかった。その頃体に変な症状が出始める。いつも微熱っぽく、タバコがまずく感じる、そして生理がこない。まさかの思いで妊娠検査を買ってみた。そして妊娠していた。私は彼とは初回しかSEXをしていなかった為相手は強引にされた店の客だった。私はすぐおろすと決めた。1人で好きでもない人の子供を産む勇気などなかった。がしかし私には中絶するお金もなく頼る人もおらず言い難い話しだがマー君にお金を貸して欲しいと頼んだ、マー君は、深く問わずにお金と父親の欄に署名してくれ手術後迎えに来てくれた。マー君には言葉では言い表せない感謝と恩だ。それからは休みの日は泣いたり引きこもる様になっていた。そしてなぜかその頃彼からの連絡もほとんど無くなっていた。でも後ろめたい、なんだか自分がとても汚れていると思っていた私は彼に会えない…そう思うようになっていて連絡がなくても私から連絡する事が出来なかった。この事件が起こる前に彼はパン屋を辞めて身内の不動産の仕事をする?とか言っていた。その頃彼はどこに居たのだろか?それを聞く余裕もない程に私の気分が落ちていた。好きでもない人の妊娠であったとしても中絶で一つの命を絶ってしまった自分を責めた…。
2回目の職場は上品な店で私に合うタイプではなかったが、給料が良いのと何より彼と同じ日曜休みだった為に頑張った。しかし彼との合う時間は全く無く連絡したが仕事で他県にいると言っていた。ほんとに私達は付き合ってるのか?と不安を抱き始めたが月日が経ってもあの事件の事に後ろめたさが拭いきれなかった。彼と別れた方がよいのか?と思いはじめた。
そんな私には似合わない雰囲気の店で働いてると、ある日突然夜布団に入り眠りにつこうとすると、ものすごい勢いで天井が回転するようになった。しかも毎日。店の店長に話して内科を受診し、目眩止めの点滴を受けるも全く効果はなかった。だんだん目眩に不安を感じ私はどうなっているんだろう?と思っていたころに、ふとマー君に相談した。マー君は「明日病院へ行こう」とそう言った。翌日マー君に連れて行かれた病院は心療内科だった、カウンセリングの結果は鬱病と診断され安定剤を処方された。病院の帰りにマー君と串カツ屋に寄りその時マー君が自分も同じ精神病だと知らされた。しかしその時点ではまさか私が精神病?と信じていなかった。帰って始めて安定剤の薬を飲んだ。すごい眠気におそわれ、1日半私は眠り続けた、そして天井が回る事はなくなった。私はストレスとなっていた店を辞め療養したが働かなければ生活が出来ない為、その焦りとあの時の出来事が払拭できず今度は死にたい気持ちにかられるようになっていた。今現在でこそ鬱病は決して珍しい病気ではないが当時は精神病患者は異常だと思われる傾向があった。その時私は24歳になっていた。病院へ初診してからマー君は2日おき位のペースで様子を見にきてくれていたが何日かした頃「まだ自分が落ち着いてないから私に寄り添う余裕がない、自分が悪くなった頃を思い出すからしばらくは会えない」とマー君に言われた。彼は無理してまで心配して来てくれていたのだ。私は目眩をきっかけに店も辞めていたので預金もなく、マー君とも距離を置かれ、何より彼の事がこんなにも好きなのにどうしたらいいのか?と、とてつもない不安にかられていた。
そして私はこの頃からを始めとして現在に至るまで病気に悩まされる事になる。
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