第4話

時は前後するが、マー君に出逢ってそう時間も経たない時に私は2人の男性に出逢った。当時私達年代にはクラブに行くのが遊びの1つでもあった、クラブといっても綺麗なお姉さんやホストがいるクラブではなく、立ち飲みしながら音楽に合わせ体を踊らせるといったクラブの方だ。若かった私は仕事終わりにあまりお酒は得意ではなかったがクラブで遅く迄遊んでまた次の日仕事でも体力は全く疲れなかった。現在の私にはとてもできないが…笑。

ある日も同僚といつものようにクラブへ出かけた。その日はクラブも混んでいてテーブルも満員だったので先に来ていた男性2人のテーブルにお酒を置かせてもらって同僚と時間を楽しんでいた。すると同じテーブルの男性が「コンタクト落としたけど一緒に探してもらえない?」と声をかけてきた。声をかけてきた男性は特別な容姿ではなかったがノリが良さそうなタイプの第1印象、もう1人は背も高く容姿も良くモテそうな印象だった。結果コンタクトは見当たらず雑談をして私達のお酒代も払ってくれる気前の良い2人だった。話を聞けば2人共いい所の大学出で大手企業に勤めているサラリーマンだった。振り返ってみれば私の周りには高校卒か中卒の人達ばかりで職人が多くサラリーマンと話すのは仕事で髪を切っている時くらいだった。

私は2人に魅力を感じた。特に容姿の良い、名字をとってFちゃんに好感をもったが彼は出張で神戸に来ていたらしくすぐ東京へ戻るらしかった。もう1人の彼Yちゃんは神戸で仕事をしていた。2人は連絡先交換をしてくれた。

私はその時どうせ私のような高卒の人間の相手などしてくれるはずがない、くらいにしか思っていなかったが東京へ帰ったFちゃんは私が家賃、生活費で余裕もなく当時ビデオデッキが欲しかったが我慢してると電話で話したら後日Fちゃんからビデオデッキが届いた、頑張ってとメーセージカードを添えて。驚きと嬉しさでとても幸せな送り物だった。以来頻繁ではないが夜から深夜遅くまでお互いの近況、時には愚痴を電話で語りあった、私は少し彼に恋心を抱いたが身分が違うから諦めるしかないかな?と思っていた。それでも彼からの電話は嬉しかった。こんな私の相手をしてくれることが…。

そして神戸で仕事をしていたYちゃんは私の店に髪を切りに来てくれるようになり、来てくれたその日は決まって夕食を誘ってくれた。夕食といっても私が同僚と行くマックや居酒屋とかではなく、ホテルを予約してコース料理をご馳走してくれたり、決まって食後はおしゃれで金額も高めのバーに連れて行ってくれた。その後はタクシーに乗せて帰らせてくれた。YちゃんもFちゃんもとても紳士的で魅力的に私には見えた。同時に毎日同じ時間働いてもこんなに収入が違うのは大学を出てないせい?と虚しさを感じる時もあったがそれ以上に2人が眩しかった。

2人は私より5歳年上で妹の感覚で遊んでくれていたのかもしれないが、それでも十分だった。

だが、Fちゃんは東京へ、Yちゃんは海外へ行く事となり突然Yちゃんとはお別れがやってきた。私は彼にたいしたお礼も出来ず彼を見送った。

2人共遠く離れた場所に行き寂しくはなったが仕方ないと自分に思いこませた。彼女でもないしね。そう2人には彼女がいたし…。もう二度と会うこともないかもしれないが…。あっけなくさよならはやってきた。

そう、後にYちゃんと私は結婚するとはお互いこの時点では考えてすらなかった…。

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