第21話 情景の歪み

 朝起きて、すっかり変わり果てた世界で僕は息をしていた。体中が疲れにおかされ、神経過敏になった神経が「おはよう」と言う。

 僕は「おはよう」と心の中でつぶやく。

 台所で朝食を作った。トースターでパンを焼き、フライパンで目玉焼きを作る。

 僕を第三者が見たらきっと普通の人に思うに違いない。

 事実僕は普通の人と変わらないのだけれど、この自意識というものに苛まれているのだ。

 僕は路上を歩き、一人でスーパーに向かった。

 そこで昼ご飯を買った。

 スーパーにいる人が目につき、僕は疲れからどうにもならない思いを抱え込んでいた。

 こうして普通に日常生活を送っていくことが、楽しくなく、そして苦痛だった。

 そんなことを考えていたら、頭に取りついた悪魔がそっと僕の情景を変えてしまった。

 僕はスーパーの中の歪んだ情景の中で生きる。

 すっかり昔とは景色が変わってしまった。昔はささやかなことが楽しくて仕方なかったのに。家に帰れば父と母がいて安心できたのに。

 スーパーで昼食と夕食の食材を買い、僕は店を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短編集です。 renovo @renovorenovo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る