師匠(原幌平晴氏)と語ろう(家路につくまで)(十月六日改題)

 新宿に到着したのは午後二時ぐらいだった。

 駅ビルでガンプラを眺めたり、宝くじ(スクラッチ)をこすり過ぎて紙まで削ったり(ハズレ)、待ち合わせの喫茶店近くのお茶屋さんでどら焼きを食べながら『南総里見八犬伝』を読む。

 私が読んでいたのは『角川ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫) 』なのだが、改めて読むと思う。

――結構グロいな。

 結構、原文などを読むと血まみれのシーンが多い。

 ホラーとは言わないがスプラッターのようではある。

 ふと目をあげると、私の前の席でカップルが異常にいちゃついていて死んだ魚の目と感情で残りのどら焼きとほうじ茶を飲んで席を立った。


 待ち合わせ前の一時間前に集合場所の喫茶店に行く。

 禁煙ブームの中、灰皿とお冷が出されたときは驚いた。

 私は『南総里見八犬伝』から『みんなで筋肉体操』(ホテル駅近くの本屋さんで買った)を読んだ。

 数時間前にファミレスでフライドポテトをモリモリ食べながら読んだが、「長続きする人出るかなぁ」と思った。

 詳しいことは『暇人の集い』で書くが、私はジムに通い二十年以上になるが最終的には(私ごときがおこがましいけど)自分に信念とか哲学を持っていないと長続きしない。

 スマートフォンが鳴った。

 師匠こと『原幌平晴』氏から遅れる旨の連絡だった。

 私は「わかりました」と返事をした。

 そこから私は思案の海に沈んだ。

「おーい」

 目の前で手がひらひらしている。

 慌てて前を向くと師匠が前に立っていた。

「大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です」

 師匠は私の前に席に座り飲み物を頼んだ。

 贈り物を渡し、師匠が飲み終わるころに店を出た。


「何食べたい?」

 歩きながら師匠が聞く。

 去年は大根がマイブームで『おでん屋さん』をリクエストしたが、今年は特にない。

「じゃあ、ここでいい?」

 師匠が一軒の居酒屋で止まる。

「はい」

 中に入る。

 まずは、乾杯をして近況報告などをする。

 私はカクテル、師匠は日本酒である。

 魚に力を入れている居酒屋らしく魚介系の料理が多い。

 私は無遠慮に頼む。

 そこに私の予想していなかったものがあった。

『辛子レンコン』と『塩銀杏』だ。

 どちらもある漫画で見て前から「おいしそうだなぁ」と思っていた。

――機会があったら食べたいなぁ

 その機会が巡って来たのだ。

 まず、塩銀杏(殻付き)。

 独特の風味で殻を割るのが面倒(師匠のコメント「ピスタチオみたいだな」)だがねっとりして美味かった。

 次に辛子レンコンだが(注文した時師匠の目が「?」になっていたが)辛子が強すぎた。

 酒には合うが辛い。

 刺身盛なども頼んで(本当に無遠慮の弟子)色々話した。(この辺当たりの話は師匠にパス)(師匠、心の声「え?」)

 世間のことや小説のことなのだ。

「そろそろ、オーダーストップなのですが……」

 店員さんが来るまで私たちは酒に酔い、話を楽しみ、時間のことなんて考えなかった。

 出汁茶漬けを食べながら今後(来年のこと)を少し話す。


 新宿駅まで一緒に歩く。

「じゃあ、また」

 師匠が手を差し出す。

「はい、また来年」

 この時、実はちょっと寂しかったりする。

 そんな思いを封じて私も手を差し出し握手する。

――また、来年も楽しい話が出来ますように

 

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