森のシャンプーはスース―した(江戸東京博物館に行くまで)
適当に時間をつぶし私が宿にしたカプセルホテルに着いたのは、午後七時を少し回っていた。
間口が狭く奥まった家のことを京都では『うなぎの寝床』なんて言っているが、私が泊まったホテルは両サイドを飲み屋に挟まれ入り口は人一人立てるかというぐらい狭いが奥が広くシャワールームやベットも完備している。
ただし、各設備は畳一畳分ほどだ。
シャワールームにはホテル独自のシャンプー、リンス、ボディーソープが完備されている。
が、どうも、体が冷える。
『液体ミントですか?』という感じだ。
のちにこのカプセルホテルについて調べると親会社がフィンランドでサウナ経営をしているらしく、シャンプーの開発もサウナがベースにあるらしい。
確かにサウナで火照った体に清涼感のあるシャンプーなどは気持ちいいのだろうが正直、シャワーのみの私からすると寒い。
温度を上げて体を温めた。
館内着に着替え、ベットエリアへと行く。
この時、スマフォのバッテリーは六パーセントを切りかなり切羽詰まっていた。
『早く、充電したいなぁ』
地図アプリはかなり消費が激しいようだ。
指定されたベットに向かい中に入る。
四つん這いにならないと天井に頭をぶつけそうだ。
急いで持って来た充電器を持ち、部屋にあるソケットへ差し込んだ。
が、入らない。
焦った。
このままでは充電が出来ずに明日になる。
――師匠との連絡などはどうしよう?
本気で心配になり受付カウンターで相談しよとしたときようやっとソケットに充電器の端子が入った。
急いでスマートフォンを充電。
薬も飲み、お手洗いにも行き、私は安心して眠れる……はずだった。
カプセルホテルは基本的に薄暗い。
手元のライト調節器で明るさをいくらか変えることが出来るが自分のいるベットのみである。
外は足元にランプの明るさがあるだけだ。
――トイレに行きたい
薄く目を開けた時だ。
足が引きつるように痛くなった。
――
この時、ジムのトレーナーの言葉を思い出す。
――いいかい、足が攣ったら足首を直角にして、足を思いっきり延ばすんだ。そうすると軽減できるよ
私はこの言葉通りに足首を直角にして足を延ばした。
だいぶ楽になった。
よろよろになりながら廊下に出てトイレで用をすます。
その後、なかなか寝付けずうとうとまどろんでは目を覚ますの繰り返し。
ふいに体の力が抜けて眠れた。
翌朝。
私は午前八時半に目が覚めた。
チェックアウトが十時なので急いで身支度をしてチェックアウトをした。
外の風景は一変していた。
あふれていたサラリーマンやOLなどの姿はなく、店も閉じられて閑散としていた。
私は駅に向かい、駅中にあったスターバックス(今作三度目の登場)でコーヒーとサンドイッチを頼み外の風景を見ていた。
――まあ、今日は休日(土曜日)だし、のんびりできるよね
なんて甘い見通しをしていた。
朝食を終えて目的地へ向かう電車を見たとき、背筋が凍った。
満員電車だったのである。
いや、都会にお住まいの方なら「あー、空いているねぇ」かも知れないが、田舎のものからすると「うわ、混んでいる」という感想だ。
とりあえず乗り込み、目的地のある両国へ向かう。
江戸東京資料博物館。
そこが目的の場所である。
次回予告
時代劇小説の聖地(なのかな?)「江戸東京資料博物館」から師匠と会うまでの話は次回。
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