お墓参りツアー 2019

旅立ちの空は曇りがいい(柴田錬三郎のお墓参りまで)

 九月某日。

 私はいつも通り午前五時半に「めざましテレビ」(フジテレビ系)を文字通り目覚まし代わりにつけて(テレビの予約機能)すぐに消し、急いで朝食を胃に収め、身支度をして家を出た。

 違うのは肩からかけているバックがいつもの深い緑のなんでも入るバックから青い少しお洒落なバック(でも、大きい)になっていることだろう。

 それから、会社に行くのだが、この日は途中下車して駅付近のバスターミナルで私はバスを待った。

 時間が少しあるので最寄りのスタバで大好物の「キャラメルフラペチーノ」(はい、ハイカロリーですよ)を飲んだ。

 会社には有給休暇を事前に出していた。


 私は、この日から一泊二日で東京に行き柴田錬三郎、池波正太郎の墓に手を合わせ、宿に泊まり、師匠(原幌平晴氏)と飲む算段なのだ。


 バスが来た。

 平日の朝だったが意外と人はいた。

 何故か隣がどこかの女性外国人二人組で通路を挟んで(私は窓側)異国の言葉で賑やかに会話している。

 バスは出発し高速道路に入る。

 田舎の田畑だらけの風景から徐々にビルが立ち並ぶようになる。

 スパイスなのか化粧の匂いなのか、隣の女性からかなり異国の匂いがした。(不快なものではない)

 途中、市谷駐屯地が見えた。

 前日に内閣改造があり(はい、これで日時が分かります)新しい大臣をお出迎えするのか門には多くの自衛隊の人が周囲に目を配っていた。

――ニュースで見聞きはするけど、本当に都内にあるんだぁ

 などと驚いた。

(実はバス移動は今回で三回目でようやく、周りを見る余裕が出来た)

 次に都内のバスタ新宿で私は興奮した。

 二月に見た『劇場版シティーハンター プライベートアイズ』に出てきたからだ。

――おお、あのシーンは、ここだったかぁ

 実に感慨深い。

(あえて、ぼかしております。アニメシティーハンター好きなら見て損はないです。レンタルでもいいのでぜひご覧ください。現在にアレンジしつつあの八十年代の空気をそのままに味わえます)


 東京ドームホテルで降りた私は立ててある看板の地図と交番の警察官に道を確認しつつ小石川伝通院を目指す。

 そこで富阪と呼ばれる坂を上るのだが、結構急な坂である。

 途中で「東京都戦没者霊苑」で戦没者や犠牲者に手を合わす。

 しかし、すぐ近くに東京ドームシティがありジェットコースターの音と乗っている人の悲鳴が響き、何となく皮肉めいた場所になっている。

 そろそろ、昼時である。

 以前あった酒屋は何故かお洒落なバーになりランチをやっていたがそこには入らず、同じ富阪にある小さな居酒屋の戸を開けた。

 戸の前には「ランチやっています」

「いらっしゃいませ」

 店員さんが声をかけてカウンターに座らせてくれた。

 お薦めのメニューなども紹介されたが私はネギトロ丼セットを頼んだ。

 私は偏食なのだが、この店の定食は全部私が食べられるセットだったので残さず食べられた。

 食後のお茶を啜り、店を出た。

 東京という土地なのに安価だったのも嬉しかった。(お財布的にも)


 伝通院に到着した。

 二十年ほど前、初めて門を見たときは未だ新調されずにいたが今は改修されて未だ木の匂いを感じることがある。

 まずは本堂でご本尊に手を合わせる。

 ここも初めて来たときは頭上に大きな鈴とそこにつながった紐が下がっていたのだが、騒音などの問題なのか今は焼香だけである。

 そして、いざ、柴田先生の墓前に……の前に、お手洗いで髪の毛を整える。

(私は物凄い癖っ毛。天然パーマともいう)

『もう、慣れているでしょう』

 という意見もあるだろう。

 慣れない。

 怖いというか、恐れ多いというか、とにかく緊張する。

 お手洗いを出て線香をもらい、墓前に立ち煙草を供える。

 初めて缶ピース(柴田先生ご愛用)を備えたときは缶の内側に小さなナイフが仕込まれているとは気づかず、受付のお坊さんに「開けられますか?」と相談したら笑顔で「はい」と受け取ったが数分後「おい、たがねを持ってこい!」「いや、これはペンチだ‼」などと大騒ぎになり、さらに数分後、百メートル全力ダッシュをしたようなお坊さんが「開きました」と息を切らせて戻って来たときは委縮した。

 今は缶ピースはプルトップ式で誰でも簡単に開けられる。

 もっとも、今は缶ピースはかなりの貴重品で私自身、今回はコンビニで買ったピースマイルドとピースライトを備えた。

 来年に向けて要努力である。

 墓前で手を合わせる。

 就職できたこと、今年も作品でめちゃめちゃ遊んだこと(妄想という)、今の世界のこと……

 一通り終わると、一礼して去った。


 次回予告。

 次回はより重圧プレッシャーのかかる池波正太郎先生のところに行きます。

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