「もっと、救命をしましょう」 浜辺祐一編

 今回取り上げる人物は、存命の方だ。

 あたりまえだが、墓参りに入ってない。

 でも、彼の仕事場に(外側だけど)行ったことはある。


 浜辺祐一。

 彼の本業は作家ではない。

 本業は大都会、東京は下町、墨東病院ER(救命救急室)の部長である。

 部長になった今でも夜勤をこなしているそうだ。


 彼の本を読み始めたのは、私がネットで小説を書き始め医者が登場することになり手技や裏話が知りたくて本屋に行ってあったのは『救命センターからの手紙 ドクター・ファイルから』だった。

 この作品で浜辺氏は『日本エッセーリスト・クラブ大賞』を獲得する。

 阪神・淡路大震災での医療活動から暴走バイクによる自損まで幅広く取り扱っている。

 

 この人のエッセーが読まれ続ける理由は、決して高みの目線ではないこと。

 悩むし、暗い気持にもなるし、時がたつにつれて、超高齢化社会によるひずみも明るみに出てくる。

 それでも、浜辺氏は救命を続けてエッセーを書き続けている。

 本人の弁に寄れば「エッセーを書くことで自分自身を振り返り、自分が流れ作業になってないかを自問するもの」

 だが、結果的にその誠実さは多く読者をひきつける。


 で、墓参りではないが、件の墨東病院へ行ったことがある。

 本の中でも『怪しい店がいっぱいある』とあり、行ってみたのだ。

 まず、大通りは病院の近くだけあり薬局や花屋が多かったような気がする。

 だが、病院に行くために路地を一本入ると「ご休憩○千円」みたいなぺなぺなした分厚いビニールカーテンの店が多くあった。

 のちに、この地は湯島天神を祭っているそうだが、そんな気配なし。

「あー、浜辺先生が言っていたのはこれね」

 と納得。

 

 そして、墨東病院。

 まず、大きい。

 しかも、行った当時は新築だったので綺麗だった。

 ただ、第三次病院(重篤な患者しか受けれない病院)だけあり中に入る人はみなどこか大変そうだ。

 とりあえず、病院の周りを見て回ると、救急車が私の横を通り地下への通路に入って行った。

 この瞬間、なぜか涙が出そうになった。

――ああ、また、色々なことが起こるんだな

 以来、墨東病院には行ってない。

(だって、病院は怪我した人や病気をした人がいく場所なので)


 浜辺氏は救命の大切さを訴えてきた。

 今でこそ、AEDなど当たり前になりつつあるが、それ以前から浜辺氏は言い続けた。

「なんで重篤な患者は救急車で渋滞につかまりたらいまわしにされるのに、臓器移植ではヘリを使うのか? もっと、救命をしましょう」


 

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